株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

気道損傷(吸入損傷)[私の治療]

No.5163 (2023年04月08日発行) P.40

織田 順 (大阪大学大学院医学系研究科救急医学教授)

登録日: 2023-04-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 吸入した熱あるいは煙に含まれる化学物質によって気道,肺実質が損傷される。火災など,物質の燃焼が原因の場合,一酸化炭素や燃焼によって生じた化学物質による中毒を合併する。したがって,治療はこれらの病態に対して緊急度順に行う。

    ▶病歴聴取のポイント

    救助と安全確保が優先される。周囲の安全を確認し,緊急での気道確保を要さない場合には,受傷時の状況を聴取する。状況により皮膚の熱傷に合併する場合がある。一酸化炭素(CO)中毒により意識障害をきたしている場合には,十分に病歴が聴取できない。病歴聴取〜初期評価の間は高濃度酸素投与を行う。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    外傷診療と同様に,気道・呼吸・循環の評価と安定化から診療に入る。皮膚への熱傷受傷のみであれば,通常意識は清明である。意識障害を認める際には,CO中毒あるいは合併損傷の存在を念頭に置く。

    口腔・咽頭・喉頭は熱の直接作用により局所に炎症を引き起こし,血管透過性を亢進させ,上気道の粘膜に浮腫を生じる。下咽頭〜喉頭浮腫による気道狭窄は時に進行性で致死的であるので,窒息リスクをいかに見出すかが,まずは身体診察のポイントとなる。顔面のすすや鼻毛の消失,すす混じりの痰の喀出は気道損傷を疑うポイントとして重要であるが,喉の詰まった感じや呼吸困難感などの自覚症状,気道狭窄音や嗄声などの他覚所見は,より切迫した状況を疑わせる。酸素飽和度(SpO2)モニター値は気道閉塞が進行するまでは保たれていることが多いため,これだけを頼りにはしない。

    一方,下気道の損傷は熱損傷よりも煙などの吸入物質中の化学物質の接触により起こるものが主である。活性酸素種,有機酸,アルデヒドなどにより気道粘膜の炎症反応が引き起こされると,気管支微小血管での血管透過性が亢進して気道内に滲出をきたす1)。CO中毒を合併することが多いので常に念頭に置く。

    残り1,167文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top