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【識者の眼】「研修医の働き方改革⑨─日本全国の研修医のCOVID-19診療実態」西﨑祐史

No.5155 (2023年02月11日発行) P.68

西﨑祐史 (順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)

登録日: 2023-01-27

最終更新日: 2023-01-27

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、医療教育の現場においては、研修医の臨床研修の機会が制限される場面に遭遇するようになった。その主な理由は、院内の感染管理および、研修医のバーンアウト予防であろう。研修医のCOVID-19診療機会をコントロールすることで、病院における感染管理の強化や研修医のメンタルヘルスは保護される。その一方で、COVID-19診療を通じた感染症診療経験の制限は、研修医の基本的臨床能力の開発の妨げになる可能性がある。

これまでに、大規模データに基づいた、日本の初期臨床研修医のCOVID-19診療の実態とそのメンタルヘルスへの影響はまだ明らかになっていない。そこで、我々は、初期臨床研修医を対象とした全国規模のアンケート調査を実施し、研修医のCOVID-19診療実態とそのメンタルヘルスへの影響を評価した1)

アンケートは2021年1月下旬に実施した。解析対象者数は、5976名であり、内訳は、男性が4064名(68.0%)、1年次研修医が2041名(50.9%)であった。COVID-19診療経験については、経験なしの研修医が2807名(47.0%)と約半数を占めていた。また、研修医のバーンアウト罹患割合は、全体の21.4%(1277名)であり、多変量解析の結果、COVID- 19診療に関連する因子において、バーンアウト増加に有意に関連する因子は、コロナ診療経験人数11人以上〔有病割合(prevalence ratio:PR)1.25、95%信頼区間(confidence interval:CI)1.02−1.53、P=0.03〕と、不十分な個人防護具(personal protective equipment:PPE)の支給(PR:1.60、95%CI:1.36−1.88、P<0.001)であった。

コロナ禍に実施されたアンケートで、約半数の研修医がCOVID-19診療未経験と回答したことには、驚きを隠せなかった。感染管理やメンタルヘルスの観点から、無難な選択がなされていることに理解はできるが、病院における診療体制の構築、研修医の基本的臨床能力の開発の両方の観点から、研修医のCOVID-19診療機会がより多く確保される必要性を感じる。指導医によるサポート、適切なPPEの支給を徹底した上で、研修医のCOVID-19診療機会がより多く確保されるべきだと思う。

【文献】

1)Nishizaki Y, et al:BMJ Open. 2023;13(1):e066348.

西﨑祐史(順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)[研修医働き方改革総合診療]

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