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【識者の眼】「増すCOVID-19サーベイランスと検査体制整備の重要性」西條政幸

No.5154 (2023年02月04日発行) P.71

西條政幸 (札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)

登録日: 2023-01-26

最終更新日: 2023-01-26

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筆者は、オミクロン株による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は限られた指定医療機関だけではなく、多くの医療機関で診るべき感染症であると述べた1)。それは病原体SARS-CoV-2のヒトからヒトへの伝播性の高さ、病原性の低下(致命率の低下)、COVID-19ワクチン接種の広がり等、COVID-19の特徴を踏まえてのことである。社会全体でCOVID-19流行に向き合い、流行が起こるリスクを受け入れていかざるを得ない。COVID-19陽性者を非陽性者から空間的に分ける、いわゆる「隔離」を基本とした対策は、流行の規模を小さくすることには寄与しない。流行を小さくする(根絶させる)ためには、また、 COVID-19で亡くなられる患者を一人でも少なくするためには、適切なワクチン接種政策が最も有効である。

本稿を執筆している2023年1月中旬、日本のオミクロン株によるCOVID-19流行が急速に小さくなっている。過去2シーズン流行のなかった季節性インフルエンザの流行が、2022-2023年シーズンには急激に大きくなりつつある。COVID-19の流行規模が急速に小さくなりつつあるのは季節性インフルエンザ流行の拡大による干渉が理由のひとつと考えている。そのためCOVID-19流行は更に小さくなる可能性がある。いずれ再びCOVID-19流行が大きくなる可能性は否定しないが、その規模はこれまでの流行規模に比較して徐々に小さくなるものと考えている。

今後、COVID-19流行規模が小さくなればなるほど、呼吸器症状を呈する患者に対するSARS-CoV-2に関連するウイルス学的検査を実施することの重要性は増す。より多くの患者に広くウイルス学的検査を実施し、COVID-19流行状況をリアルタイムに把握することが必要になる。PCRなどの遺伝子増幅による検査や免疫反応を基盤とする抗原検出検査で陽性となった患者の検体については、ウイルス分離検査まで実施し、感染性ウイルスを分離し、その遺伝子配列や抗原性を継続して調べることが求められる。そして、その情報を国内外の関係者・関係機関(政府機関や研究機関など)と共有し、対策に役立てるのである。それには各都道府県等に設置されている地方衛生研究所や研究機関の果たす役割は大きい。そのための体制整備が求められる。サーベイランスが重要であることから、COVID-19患者については全数把握されるべきである。

【文献】

1)西條政幸:医事新報. 5147:59. 
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20896

西條政幸(札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)[新型コロナウイルス感染症]

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