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【識者の眼】「COVID-19発見から3年:現在の社会では指定された医療機関だけで診る疾患ではない」西條政幸

No.5147 (2022年12月17日発行) P.59

西條政幸 (札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)

登録日: 2022-12-01

最終更新日: 2022-12-01

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が初めて発見されてから3年が経過した。コウモリ由来と考えられるSARS-CoV-2が原因ウイルスで、COVID-19はいわゆる動物由来ウイルス感染症である。これまで動物由来ウイルスによる致命率の高いウイルス感染症の研究に従事してきたものとして、このような動物由来ウイルス感染症の大規模流行に遭遇している現実に驚いている。私は、COVID-19流行は天然痘(痘瘡)の世界的流行に続く事態と考えている。この3年間、in vitroや動物実験(in vivo)で行われる研究と実際の流行状況を調査し、分離ウイルスの遺伝子変異の推移を世界規模で解析し、ワクチンや抗ウイルス薬が開発され、その効果がCOVID-19発見から1年もしないうちに確認されるなど、驚きを持ってこの事態を受け止めている。

2021年3月まで国立感染症研究所で研究者として業務にあたり、ウイルス研究や日本国内外の感染症対策に従事してきた。重症急性呼吸器症候群(SARS)やCOVID-19の診断法開発や抗ウイルス薬研究を行い、いくつかの学術論文を発表している。2003年12月から2004年1月にかけて中国南部の広東省で発生したSARS流行に対応するために世界保健機関(WHO)専門家として中国北京のWHOオフィスで対策にあたった経験も有している。2022年4月からは札幌市のCOVID-19患者に直接対応する業務を担当している。臨床的な側面と公衆衛生的な側面、そして、社会学的側面を兼ね備えた仕事である。私は今、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2のウイルス学的特徴に関する研究と、世界規模のCOVID-19流行や地域のCOVID-19患者への支援など、幅広い経験を積み重ねている最中にいる。もう少しCOVID-19流行対策に携わることになりそうである。

COVID-19流行の初めの2年間は、きわめて病原性の高い武漢株由来SARS-CoV-2による流行(ワクチン接種がほとんどなされていない、アルファ株によるCOVID-19流行時の患者の致命率は3〜5%)が続き、3年目の2022年1月から現在にかけて、比較的病原性の低下したオミクロン株SARS-CoV-2による流行になっている。札幌市ではオミクロン株SARS-CoV-2によるCOVID-19患者の致命率は0.5%未満である。“オミクロン株由来COVID-19患者を隔離して、限られた医療機関だけで入院調整する、発熱患者は指定された発熱外来でのみ診察する”、このような現在の医療提供体制は3年前から実施されているシステムと基本的にはなんら変わっていない。屋外であってもほとんどの人々がマスクを装着している現状は理解しがたい。COVID-19流行を経験して、感染症対策のあり方について何を学んでいるのだろうか。

現在のCOVID-19の特徴やワクチン接種の広がりを考慮して、限られた医療機関でのみで対応する感染症ではなく、すべての医療機関で対応されるべき感染症であることを基本とした対策にすべきである。

西條政幸(札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)[新型コロナウイルス感染症]

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