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【識者の眼】「医療現場へのバーンアウト対策と医療職のウェルビーイング宣言」松村真司

No.5152 (2023年01月21日発行) P.58

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2023-01-06

最終更新日: 2023-01-06

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人流の増加が予想された年末年始が終わり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数は増加を続け、各地で医療の逼迫が再び始まっている。今後インフルエンザの同時流行が起き、現場への負荷がさらに増大した場合、既に疲弊した医療職はバーンアウトの危機にさらされ、結果として患者へのケアに大きな影響を与えることが強く危惧される。これらに対し、早急な対応が必要なことは既に繰り返し言及した1)2)。今回はこの中で、対応に時間がかかると思われる、医療職のウェルビーイング対策についてさらに持論を述べたい。

医療職には、人類愛に基づいて奉仕を行い、また生涯にわたり自己研鑽を続けることが倫理規範として求められている。プロフェッショナルとして技術を保つことがその職業的使命にあることは言うまでもない。一方、そのためには同時に自らの身体的・精神的健康を維持し、さらには社会的にも良い状態を継続的に保つことも重要である。伝統的な医療者の職業規範は、患者を優先し、自己犠牲と忍耐を善とする価値観が強調され3)、自らのウェルビーイングを管理していくことについての優先度がこれまで相対的に低くなっていたことは否めない。

しかし、時代は変わりつつある。長時間労働や、個人に負荷のかかる仕組みから、タスクシフト・タスクシェアリングを行い、互いに助け合い、一定の質を集団として保つことが求められる時代である。そのためには、システムの改変やテクノロジーの導入で効率化することはもちろんである。しかしその前に、社会に対して丁寧な説明を行い、医療職、特に医師のウェルビーイングを保つことの重要性について十分な理解を得ることが必要だと考える。

まずは、東北大学病院が本年行った「ウェルビーイング」宣言のような、意識改革の第一歩としてその重要性を内外に発信することから始めることを提案したい4)。特に、ここ数年のワクチン業務への協力や、感染対策のために休暇を返上し、時間外への対応が続いてきた地域医療の現場に対し、すべての医療職のウェルビーイング向上をめざした積極的な発信を関係団体には求めたい。

【文献】

1)松村真司:医事新報. 2022;5129:57.

2)松村真司:医事新報. 2022;5134:57.

3)日本医師会:日医師会誌. 2022;151(4):付録. 
https://www.med.or.jp/dl-med/doctor/rinri/inorinri_leaflet.pdf

4)東北大学病院:東北大学病院「ウェルビーイング」宣言. 
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/outline/well-beinng

松村真司(松村医院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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