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魂が抜けてしまった74歳男性[鑑別診断塾入門(41)]

No.5146 (2022年12月10日発行) P.7

塩尻俊明 (国保旭中央病院総合診療内科部長)

登録日: 2022-12-09

最終更新日: 2022-12-07

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【現病歴】<独居のため,同居していない家族からの情報>X-6カ月,歩きにくさを自覚し,近医で頸椎症と言われていた。徐々に歩行障害が増悪傾向にあったが,家族が様子を見に行った際,独居生活は何とか可能であった。X-5日,電話で様子を聞くと「歩くのが大変だ」と言っていた。X-0日,心配になり患者宅を家族が訪れると廊下で倒れており,尿失禁しているところを発見。呼びかけに返事をするが,遠くを見たまま,無表情で「魂が抜けてしまった」ように感じ,救急車にて当院へ搬送。
<追加の情報>この半年,表情が乏しくなっていったが認知機能に問題があるようには感じなかった。本人は明らかな外傷歴を否定。家族に歩行障害について問診するも,「よくわからない,歩きにくそうにしていた」と答えるだけで詳細不明。
【既往歴】高血圧。
【内服薬】アムロジピン5mg
【生活歴】日本酒1合/日。喫煙なし。
【バイタルサイン】無表情だが,質問に対して非常にゆっくりとすべて答えることができた。GCS:E4V5M6,BP 162/60mmHg,PR 102/min(整),RR 16/min,BT 37.8℃,SpO2 96%(RA)
【身体所見】胸部:右下肺背側でラ音。神経:眼振・眼球運動制限なし。下顎反射は正常。筋力に左右差なし。振戦なし。深部感覚・表在感覚に異常なし。四肢深部腱反射は正常。Babinski反射は陰性。立位歩行は不可能であった。

 キーワード 
・半年間独居可能
・振戦なし
・慢性で増悪傾向の歩行障害
・表情の乏しさ
・微熱,頻脈,ラ音
・眼球運動障害,神経局在症状,錐体路障害,感覚障害なし

考えられる診断は?

A. 血管性認知症
B. 慢性硬膜下血腫
C. パーキンソン病
D. 頸椎症性脊髄症
E. ウェルニッケ脳症

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