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【識者の眼】「コロナの分類変化で救急外来に変化は訪れるか?」薬師寺泰匡

No.5146 (2022年12月10日発行) P.58

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

登録日: 2022-11-30

最終更新日: 2022-11-30

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を感染症法の5類にしようという動きがある。全数報告、そして入院勧告と、それに伴う医療費の国費負担の部分が2類相当と言われるところかと思われる。5類感染症になると、定点報告になれば報告の負担は減るが、全数報告のままであればさしたる変化はなかろう。現状では軽症者は入院しない方向になっており、ハイリスク者でもハイリスクであることだけを理由に入院するということにはなっていない。酸素投与や人工呼吸、栄養管理など、入院しなくてはならない理由がある人が入院になっている。入院適応については、なし崩し的に5類同然になってしまったところで、実態に合わせにいくというくらいの意味しかないのではないか。

今後、大きく変化が訪れる部分があるとすれば、治療費が通常の保険診療に変わることと、これまで入院先調整を保健所等で行っていたものが、行われなくなるという点であろう。COVID-19の特異的治療薬として用いられているニルマトレルビル/リトナビルは薬価収載がないが、モルヌピラビルは薬価収載がなされた。しかし非常に高価で、5日間投与で10万円近くになる。治療をするかどうかという点で、患者に選択の負担を与えることになるので、この点は十分承知しておく必要がある。また、自院で入院管理ができればよいが、できない場合はCOVID-19で入院適応がありそうな人の入院先を調整する必要が出てくる。どこの病院・診療所でも発熱患者の診療をしてもらいたいという期待の声も聞かれるが、突然行政から民間に投げてしまうと、混乱をきたす可能性が高い。これまでも、自院で対応不可能であるということで病院・診療所から救急要請をして、搬送先選定に難渋した救急隊が保健所に相談して、入院受け入れ先を探すことが度々あった。慎むべき行動であるが、入院先選定は現場にとって大きな負担であるということの表れではなかろうか。

これまでCOVID-19の入院診療を行っていた病院にとってみれば大きな変化はないかもしれない。しかし、そうではない医療機関にとっては変革を求められる上、市民レベルで訪れるであろう変化をよく理解し、発信しておく必要があるのではないか。発熱患者が今以上に搬送困難に陥りやすくなったり、COVID-19以外の診療に大きな影響を及ぼしたりしないことを願う。

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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