株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

双極性障害[私の治療]

No.5144 (2022年11月26日発行) P.48

松尾幸治 (埼玉医科大学病院神経精神科・心療内科教授)

登録日: 2022-11-29

最終更新日: 2022-11-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 双極性障害は,躁病エピソード,抑うつエピソードを繰り返す疾患である。躁病エピソードは,気分高揚,易怒性,活動性の亢進,誇大性,睡眠欲求の減少などを呈し,抑うつエピソードは,抑うつ気分,興味・喜びの喪失,悲観的思考,食欲低下・亢進,睡眠障害(不眠・過眠)などを呈する。ゲノム研究,脳科学研究から脳の病態に基づく疾患であることは明らかである。臨床上,うつ病との鑑別が重要である。

    ▶診断のポイント

    現症あるいは病歴で軽躁あるいは躁病エピソードが認められることが必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    薬物療法,精神療法,社会的支援の3本立てで行うことが望ましい。薬物療法については,急性期(躁病エピソード,抑うつエピソード)治療と寛解期の維持療法では戦略が異なる。精神療法は心理教育(疾患教育)がベースとなり,その他の専門的治療(認知行動療法など)を行う。社会的支援は,家族への心理教育,職場や生活環境の調整や社会資源の導入などが行われる。

    薬物療法については,気分安定薬〔リーマス(炭酸リチウム),デパケン(バルプロ酸ナトリウム),ラミクタール(ラモトリギン)など〕と言われる薬剤が基本となる。躁病エピソードには,気分安定薬に第2世代抗精神病薬〔ジプレキサ(オランザピン),エビリファイ(アリピプラゾール)など〕を使用する。抑うつエピソードも第2世代抗精神病薬〔ビプレッソ(クエチアピンフマル酸塩),ラツーダ(ルラシドン塩酸塩),ジプレキサなど〕が第一選択となる。抗うつ薬は効果がない,あるいは限定的というエビデンスが蓄積されてきている上,躁転(躁病エピソードに転じる)のリスクがあることから,できるだけ使用しない,あるいは使用しても短期間にとどめることが望ましい。維持療法については,気分安定薬のほか,エビリファイ注が使用される。

    安全性については,炭酸リチウムは定期的な血中濃度の測定が義務づけられており,甲状腺ホルモンやカルシウムの低下,長期的には腎機能障害のリスクがあることから定期的な採血が必要である。ラモトリギンについては投与の初期および増量時に重症皮膚障害(スティーブンス・ジョンソン症候群,中毒性表皮壊死症)のリスクがあるため,適切なモニタリングが必要である。オランザピン,クエチアピンは,著しい血糖値の上昇から,糖尿病性ケトアシドーシス等の重篤な副作用を生じるリスクがあるため,定期的な採血および患者・家族への情報提供が必要である。したがって,この2薬剤は糖尿病の患者,糖尿病の既往歴のある患者には禁忌である。

    残り2,172文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top