株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「かかりつけ医は診療所と病院のネットワーク方式で」武久洋三

No.5141 (2022年11月05日発行) P.58

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2022-10-12

最終更新日: 2022-10-12

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

現在、「かかりつけ医」についての定義・論議でかしましいですが、何よりも医療を受ける人たちの側に立って考えることから始めるべきではないでしょうか。

診療所は主に近隣住民が体の不調を感じた時に診療を受ける場所です。症状が重い場合は病院や救急車のお世話になりますが、診療所は何かと便宜を図ってくれたり、何より病院に比べて気軽に、そして短時間で対応してくれるところが利点です。

ただ、患者は信頼度を公立公的大病院や大学病院に置いており、何かあれば大きな病院へシフトしやすいので、厚生労働省はペナルティ的に大病院の外来初診時に選定療養費を別途徴収しています。しかし、やはり自分の身体は心配ですから、治療に最適なところを患者が選択することは当然です。

一方、長期にわたる病気や要介護者となって自在に動けない状況となれば、外来受診だけでなく、往診、在宅看取り等を診療所の医師にかかりつけ医としてお願いしたい患者は多くいます。

診療所側からすれば、いつ何時電話で往診依頼が来るかもしれません。しかも昼夜関係なく、休日も病状は変化します。医師と言えども人間なので、仕事もするけど休みも必要です。

診療所医師の年齢は2020年に28年ぶりに5割以上が60歳に達しました。そこで提案です。かかりつけ医をネットワーク方式で行うのはいかがでしょうか? 診療所と地域多機能病院が連携して1人の患者を診るのです。平日昼間や夕方など、日中の時間帯は診療所に対応していただいて、夜間・休日は地域多機能病院がカバーし、入院にも対応します。時には原病の診断・治療をしてくれた急性期病院とのトライアングル連携も必要となるでしょう。こうして患者のために病診連携して協調していくべきではないでしょうか。

ややもすると診療所は近隣の地域多機能病院に頼むと、長期に入院させられたり、その病院の関連施設に紹介入所させて患者が紹介元に戻ってこないことが多いという理由で、初めから公立公的病院に紹介してしまいます。しかし、ネットワークの病院であれば、1週間程度の入院で自宅に帰してくれるし、家族も安心だし、文句も言われません。

今後どんどん患者は減少していきます。患者を奪い合うのではなく、診療所、地域多機能病院、急性期病院、それぞれの医療機関の役割分担を明確にし、連携してかかりつけ医機能を担っていくべきです。こういう連携がうまく機能すれば、診療所も安心して対応できるでしょう。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[医療機関の役割分担]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top