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膜性増殖性糸球体腎炎[私の治療]

No.5138 (2022年10月15日発行) P.46

山縣邦弘 (筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科学教授)

登録日: 2022-10-17

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  • 膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN)は,腎生検の病理診断により形態的に診断されるもので,病因としては,糸球体係蹄壁の内皮細胞傷害を端緒に病変が形成され,免疫複合体によるもの,C3を中心とした補体を介するもの,様々な病因による内皮細胞傷害に起因するものがある。近年,補体C3の活性経路障害という観点から,MPGNの一部がC3腎症として扱われている。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    MPGNには原因が不明で,難病指定されている一次性(特発性)MPGNとウイルス等の慢性感染症や自己免疫疾患に続発する二次性MPGNがある。

    発見動機は糸球体腎炎性の尿所見,すなわち血尿,蛋白尿,円柱尿を認め,健康診断等で偶然に発見される検尿異常程度のものから,肉眼的血尿やネフローゼ症候群で発症するものまで様々である。一次性MPGNは小児~若年での発症が多いとされるが,近年は衛生環境の改善などから減少してきているとされる。二次性MPGNは様々な原因疾患に対する経過観察の途上で,尿所見異常,腎機能異常を認めることにより診断に至る場合が大半である。

    【検査所見】

    免疫複合体や補体の関与する病型では補体C3,CH50の低値を認める。

    腎生検所見では,光学顕微鏡ではメサンギウム細胞増殖と基質増生に伴う係蹄へのメサンギウム間入が起こり糸球体は分葉化する。メサンギウム間入の結果,係蹄壁は肥厚し,鍍銀染色で二重化像を呈する。半月体形成が観察されることが多い。さらに,電子顕微鏡所見により,Ⅰ型:内皮下やメサンギウムへの電子沈着物を認めるもの,Ⅱ型:糸球体基底膜内に電子沈着物を認めるもの,Ⅲ型:内皮下から基底膜内,上皮下に電子沈着物を認めるもの,に分類される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    検尿異常の精査目的で腎生検を実施し,光学顕微鏡上でMPGNと診断された場合,まずは病型診断を行う。

    【免疫複合体型】

    上気道炎や細菌・ウイルス感染症,様々な悪性腫瘍,自己免疫疾患にて体内で形成された免疫複合体の糸球体内皮側での沈着に端を発する免疫複合体型においては,原因となった抗原の排除により免疫複合体の生成を抑制することで治癒が可能である。典型例はC型肝炎ウイルス(HCV)感染に伴うクリオグロブリン血症による二次性MPGNがあり,抗ウイルス療法が優先される。自己免疫疾患や特発性など原因抗原の除去が不可能な場合には,抗体産生を抑制して免疫複合体を減量させるため,ステロイドを中心とする免疫抑制療法が行われる。

    【補体の活性化経路を介するもの】

    MPGNⅡ型はdense deposit diseaseと言われ,補体第二経路の異常によるとされる。また,C3腎症としてMPGNⅠ型ないしⅢ型を呈し,同様にC1q,C4等の古典的補体活性化経路を介さず,C3のみの沈着を認め,C3の機能獲得型変異やC3 nephritic factor,C4 nephritic factor,B因子,H因子などの自己抗体の関与が想定されている。この場合にはステロイドを中心とする免疫抑制療法が行われる。

    【何らかの理由により内皮細胞傷害をきたしその治癒過程でMPGNを呈するもの】

    TMA(血栓性微小血管症)や抗リン脂質抗体症候群,悪性リンパ腫,M蛋白を伴うもの,骨髄移植後などが知られている。原疾患に対する治療が主体となるが,糸球体腎炎に対する抗凝固療法,抗血小板療法,蛋白尿減量を期待したRAS阻害薬による治療などが行われる。

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