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残存聴力活用型人工内耳(EAS) 【人工内耳の電気刺激と補聴器の音響刺激機能を併せ持つ】

No.4824 (2016年10月08日発行) P.47

高橋優宏 (横浜市立大学耳鼻咽喉科・ 頭頸部外科講師)

折舘伸彦 (横浜市立大学耳鼻咽喉科・ 頭頸部外科教授)

登録日: 2016-10-07

最終更新日: 2016-10-11

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補聴器を装用していても会話が困難となる90dB以上の重度難聴に対しては,人工内耳が有効な治療法として,わが国では1994年に保険適用となり広く行われている。しかしながら,低音域に残聴はあるが高音域が極端に低下している高音急墜型感音難聴症例では,人工内耳の適応はなく,また補聴器でも会話が困難となる。

2014年,このような高音急墜型感音難聴症例に対して,残存聴力活用型人工内耳(electric a-coustic stimulation:EAS)が保険適用となった。E ASは人工内耳で行う電気刺激に加えて,補聴器で行う音響刺激機能も持つ一体型の人工内耳である。耳介に装着したマイクで拾った音を高音域と低音域に分離して,高音域は電気信号として内耳に伝える一方,低音域は補聴器のように音を増幅して,外耳道・鼓膜に送り込むしくみとなっている。手術は人工内耳と同様の手技で行われるが,残存聴力がEAS電極挿入により失われないように低侵襲であることが求められ,ステロイド投与が必要となる。幼児(1歳以上)から適応があり,年齢上限は規定されていない。

EAS装用患者は,初期段階では電気刺激と音響刺激が二重に感じるなどの違和感を訴えることが多い。しかし違和感は数カ月で消失し,時計のアラームや携帯電話の呼び出し音などの高音が聞こえるようになり,また,騒音下での会話の聞き取りが良好になるなど優れた効果を示す。今後,装用患者の増加が見込まれている。

【参考】

▶ 宇佐美真一, 他:Otol Jpn. 2011;21(5):763-70.

【解説】

1)高橋優宏,2)折舘伸彦 横浜市立大学耳鼻咽喉科・ 頭頸部外科 1)講師 2)教授

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