咽頭炎・喉頭炎は咽喉頭の粘膜やリンパ組織の炎症であり,咽頭痛,嚥下痛,嗄声,咽頭違和感を訴え,上咽頭に炎症が及ぶと耳症状(耳閉感・難聴)も伴う。扁桃,鼻・副鼻腔,下気道など隣接部位の炎症を伴うことも多い。
特殊な感染症(結核・梅毒・淋菌・クラミジア・マイコプラズマなど)や,緊急対応を要する喉頭蓋炎・扁桃周囲膿瘍も同様の症状で発症する場合があることに留意する。
症状と目視・内視鏡による咽喉頭の粘膜やリンパ濾胞の発赤・腫脹などの局所所見から診断する。炎症所見が軽微で咽頭の不快感,痰からみ感,嚥下時違和感を訴える場合は,内視鏡にて鼻・副鼻腔炎に伴う後鼻漏,上咽頭炎,咽喉頭酸逆流症を示唆する披裂部の発赤・腫脹の有無をチェックする。
原因の多くはウイルス感染のため,睡眠,水分・食事を十分摂るなどの疲労回復と,消炎,含嗽などの対症療法が主となる。嗄声を伴う場合には,発声を控え蒸気吸入など喉の加湿加温を勧める。上咽頭炎には上咽頭擦過療法,咽喉頭酸逆流症に起因する炎症が疑われる場合には漢方薬やプロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与する。
処方に際して,A群溶連菌(38℃以上の発熱,滲出を伴う扁桃炎,頸部リンパ節の腫脹・圧痛,関節痛,咳がない)1)などの細菌感染を疑う徴候がない限り,抗菌薬は不要であるが,乳幼児,高齢者,易感染性の基礎疾患を有する患者では細菌による二次感染を生じやすいため,症状悪化時の再診を促し,細菌感染の徴候を認めた場合は抗菌薬を追加する。
咽頭炎・喉頭炎の治療に際して,漢方薬はバリエーションが豊富で,急性期・亜急性期・遷延期,がっしりした人・華奢な人・高齢者・妊婦など患者の特徴,発熱・咳・嗄声などの主症状に合わせて選択できる。小児~青壮年者で高熱を伴う場合は,麻黄湯を用いると解熱鎮痛薬が不要となる場合が多い。
残り1,589文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する