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【識者の眼】「急性期病院における介護部創設」神野正博

No.5135 (2022年09月24日発行) P.59

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2022-09-01

最終更新日: 2022-09-01

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人生100年時代である。実際にわが国の人口構成で、85歳以上人口の急増という社会構造の変化は医療のあり方に変化を求める。国の資料によれば、65歳以上高齢者の要介護認定率は18.3%であるのに対し、75歳以上では31.5%、85歳以上では57.8%とその率は上昇する。急性期医療の現場でも、ここで示した率の高齢者が、救急受診や初診時点で、既に要介護者ということになる。

高齢者が入院する疾患は、誤嚥性肺炎、肺炎・気管支炎、股関節大腿骨近位部骨折、腎・尿路感染症、心不全、脳梗塞、胆管炎の順である。これらの疾患は、繰り返すことの多い疾患かもしれない。高齢者に特徴的なこれら疾患は、軽度急性であるから、急性期病院の対象とすべきではないという議論があるのも承知する。しかし、急変して受診したときに、その病態が軽度であるのか重度であるのかを瞬時に判定するのは神のみぞ知る領域ではないだろうか。

したがって、まず人員、機器が揃う急性期病院を受診し、結果として軽度であるならば、できるだけ早期に後方病床へ転棟、転院させるのが筋であろう。そして、軽症でないならば急性期病床でしっかり管理し治療するのが、医療者として当たり前の行動であろう。

そこで、先の要介護度である。もともと要介護者が急性疾患に罹患するわけで、急性期病院においても介護需要は大きくなるに違いない。入院当初の医療依存度は当然高い。診療部門での治療Cureに加えて「療養のお世話Care」を使命とする看護が関与する。しかし、超急性期を過ぎれば、看護ばかりではなく、「生活のお世話Care」を使命とする介護士が、関与すべきである。それによって在院日数は短縮し、在宅復帰率も高くなるに違いない。

看護師からのタスクシフトは、看護師の指示通りに動く看護助手ではなく、自ら明確な使命と誇りを持つ介護士であるべきと考える。急性期病院にも、新たなチームを創設すべきだ。

高齢化率が既に38%となる石川県七尾市に位置する恵寿総合病院(426床、うちHCU、7対1病床292床、平均在院日数10.7日)では、9月1日に新たな介護部長を選任し、介護部を創設した。役割・機能を考えれば、将来、病院医療において、診療報酬と介護報酬を混在させるべきと主張したい。

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[高齢者][介護需要]

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