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胃・十二指腸潰瘍[私の治療]

No.5132 (2022年09月03日発行) P.37

塩谷昭子 (川崎医科大学消化器内科教授)

登録日: 2022-09-02

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  • 粘膜筋板を超える粘膜欠損の状態で,内視鏡診断では3mmあるいは5mmを超える粘膜欠損と定義されることが多い。Helicobacter pylori(H. pylori)感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が二大成因で,その他薬剤,ストレス,炎症性腸疾患,好酸球性胃腸症,感染症に合併することがある。有病率は年々減少している。

    ▶診断のポイント

    診断には上部消化管内視鏡検査が必要であり,H. pylori感染診断を行う。穿孔の場合,単純X線あるいは腹部CTで診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    抗潰瘍薬としてプロトンポンプ阻害薬(PPI),あるいはより強力なカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)であるボノプラザンの単独投与が推奨され,胃潰瘍では8週間,十二指腸潰瘍では6週間まで処方する。薬剤が選択できない場合は,H2受容体拮抗薬(H2RA)と防御因子増強薬の併用が推奨されている1)。H. pylori陽性例では,除菌治療を行い抗潰瘍薬を追加するが,潰瘍治療後に除菌治療を行ってもよい。一次および二次除菌失敗例に対してPPI,シタフロキサシン(STFX)にメトロニダゾール(MNZ)またはアモキシシリン(AMPC)を組み合わせたレジメンが提案されているが,保険適用外である。NSAIDs内服例では,原則,薬を中止し,抗潰瘍薬を投与する。

    除菌不成功,H. pylori陰性潰瘍,NSAIDs中止が不可能などの場合は,酸分泌抑制薬やプロスタグランジン製剤による再発予防を目的とした維持療法を行う。NSAIDsによる潰瘍既往歴がない場合もPPIの予防投与が提案されているが,保険適用外である1)。低用量アスピリン(LDA)による潰瘍の再発抑制には,H. pylori除菌に加えてPPIの投与が推奨されている1)

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