私は日頃、家庭医・総合診療医として患者を診察しています。労働者層の患者も多く診察する中で、超過勤務、業務内容のストレス、職場の人間関係などがよく話題にあがりますが、実際の業務内容を細かく知り、思いを寄せることまではできていなかったと思います。昨今、メディアで労働者の就労と健康の問題が取り上げられているたびに、もっと患者の労働について気を配らなければいけないと改めて気づかされます。
実状を調べてみますと、平成24(2012)年度の厚生労働省による労働者健康状況調査では、定期健康診断を受診した労働者の有所見率は36.2%にも上っていました。また、所見ありと通知された者のうち、要再検査・要治療の指摘があった者が75.0%もあるものの、実際に再検査・治療を受けた者は48.3%にしか至らない現状があるようです。これらのデータをみると、がん・生活習慣病の罹患率が増える現在、疾患の治療もしくは重篤な疾患の予防に努めながらも、就労を継続する患者を支援することが、労働力人口が減少し高齢化社会が進む今後、ますます重要になると思います。
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