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【識者の眼】「医療業界でも男女平等に活躍の機会を」野村幸世

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2022-08-03

最終更新日: 2022-08-03

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昨今、日本消化器外科学会のNational Clinical Database(NCD)(95%以上の日本の外科手術が登録されているデータベース)を用いた研究として、外科医の年齢、性別ごとの執刀数に関して、JAMA Surgeryに発表させていただいた(Surgical Experience Disparity Between Male and Female Surgeons in Japan. JAMA Surg. doi:10.1001/jamasurg.2022.2938 Published online July 27, 2022.)。この研究のきっかけは、女性外科医から、「同僚の男性外科医に比べて、執刀させてもらえる機会が少ない」、「子どもを持ったら手術に入れてもらえない」、などの話をよく聞くことからである。結果、予想通り、あらゆる経験年齢層において、女性外科医の執刀数は男性外科医よりも少なかった。しかも、この差は、術式の難易度が上がるに従って顕著であった。

日本のジェンダーギャップインデックスの低さの理由に、指導的立場の女性の少なさが挙げられる。この原因として、多くの人は、女性は子育てや家庭運営にエフォートを取られるから、と思っていることであろう。それもあるかもしれないが、私たち女性外科医から見れば、活躍の場が与えられないことが最も大きな原因であると思う。どんなに優秀で、どんなに頑張っても、それを発揮する場を与えられなければ業績にはつながらない。

機会が均等に与えられないことや、外科というチームから外されたようになることは、その業績という意味だけではなく、想像以上にそれを被った外科医を精神的に追い詰めるものである。被害にあった者は加害した者が思っている以上に重く受け止めているものである。しかも、患者さんから見れば、手術の経験数の多い外科医が上手な外科医と思いがちであるゆえ、自分の執刀数が少ないという事実は声を上げにくい。「手術から外す」という行為は実に巧妙に部下を貶める方法である。それを利用して絶対的な服従を強いている外科のチームリーダーもいるのだろうが、そのやり方はまさにイソップの「北風と太陽」の「北風」である。そのようにしないと自分への求心力が得られないリーダーのすることであろう。優秀なリーダーは「太陽」であろう。

現在、女性外科医と男性外科医の術後死亡、術後合併症の発生の多寡を解析中である。女性外科医の執刀数が男性外科医よりも少ない現状においても、術後死亡、術後合併症は多くないと信じている。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[女性の手術成績]

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