株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

黄体ホルモン製剤による早産予防の効果のエビデンスについて

No.5127 (2022年07月30日発行) P.53

大槻克文 (昭和大学江東豊洲病院産婦人科教授/ 周産期センター センター長)

永松 健 (東京大学医学部附属病院女性診療科・産科 准教授)

登録日: 2022-08-01

最終更新日: 2022-07-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 早産既往のある妊婦,あるいは現妊娠中に頸管長短縮傾向を認めた妊婦に対して,早産予防としての黄体ホルモン製剤の有効性が議論されています。また,国内ではヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル(17-OHPC)の販売が中止となり,今後の方策を検討することが喫緊の課題となっています。
    欧米での黄体ホルモンの使用状況,国内での今後の対応などについて,エビデンスをもとにご解説下さい。東京大学・永松 健先生にお願いします。

    【質問者】

    大槻克文 昭和大学江東豊洲病院産婦人科教授/ 周産期センター センター長


    【回答】

    【頸管長短縮あるいは早産既往のリスク因子がある場合には予防的な黄体ホルモン製剤(天然型プロゲステロン経腟・17-OHPCの筋注)投与が早産防止に有効である】

    黄体ホルモンは妊娠維持に中心的な役割を担うホルモンです。そのため,黄体ホルモン製剤がかつて切迫流早産に対する治療薬として投与されていました。国内では筋肉内注射(筋注)の17-OHPC,経口のメドロキシプロゲステロン酢酸エステルおよびジドロゲステロンが切迫流早産に対する保険適用があります。しかし,切迫流早産において子宮収縮や子宮口開大が顕在化した段階での黄体ホルモン製剤の投与による早産抑制効果に否定的なエビデンスが1990年以降に示され,黄体ホルモン製剤は過去の治療法として認識される時代が続きました。

    その後,頸管長の測定に基づく早産の予知法が広まったことや,早産の病態機序に関する理解が進んだことが契機となり,症状が顕在化するよりも早い段階から早産を予防するアプローチの開発に注目が集まりました。そうした中で,2010年前後から治療ではなく予防として黄体ホルモン製剤を投与する効果の検証が進みました。

    残り627文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top