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【識者の眼】「ありがとう さようなら 山口昇大兄‼」邉見公雄

No.5119 (2022年06月04日発行) P.60

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2022-05-26

最終更新日: 2022-05-26

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私が尊敬する地域医療の巨星がまた一つ堕ちた。山口昇大兄である。今さら言うまでもないが、現在の医療政策の根幹となった地域包括ケアシステムという考えを提唱した方である。ある団体からこの英訳を依頼された。Comprehensiveと直訳する動きが主流になりかけていたが、私は「それは少し違う」と待ったをかけた。“包括”とは多職種や広い地域、いろいろな考えの方々、対象者も雑多でこれらを織り込むという意味ではIntegratedかInclusiveがベターではと。先生は即、インテグレイティドとのお答え。それに決まった。

初めてお会いしたのは、私が赤穂市民病院長になって間もない頃だったように記憶している。「寝たきり老人ゼロ作戦」というものに参加せよとの命に始まる。“地域リハビリテーション”という考えも実践されており、兵庫県立リハビリテーションセンターの澤村誠志院長(ベトナムの結合双生児ドクちゃんの義肢を製作)との縁で、あまりリハビリに詳しくも興味もなかった外科医の私に矢が当たったのであろう。「寝たきりは寝かせきりから始まる」とか「北欧にはほとんどいない」とか多くのことを教えていただいた。広島県御調町立(現尾道市立)病院ではそれらをすべて実践されていた。

理想を語るのではなく実践に基づくお話で、頭の悪い私にもすぐに腑に落ちる解りやすいお話が多かった。これが介護保険の導入へと厚生労働省が安心して進んだ大きな礎になったはずである。また、私が関わった全国自治体病院協議会と兄弟関係にある全国国民健康保険診療施設協議会(国診協)や全国老人保健施設協会(全老健)の会長としても御指導いただいた。診療報酬改定の要望のため厚労省へも御一緒したこともあり、地域医療を守る心強い戦友でもあった。

これらの御功績で国からの叙勲や山上の光賞なども受賞されている。叙勲祝賀会では、長崎大学時代の同級生で盟友でもある岩崎榮先生の心温まるスピーチや広島大元学長の原田康夫先生のカンツォーネ「オーソレミオ」など本当に楽しい会であった。私が広島の会議や講演でお邪魔すると、御多忙中にもかかわらず必ず一席設けてくださった。感謝感謝である。

ここ数年は、最愛の奥様に先立たれたり御自身が転倒されたりして体調不良とは伺っていたが、自他共に一番弟子と認められている我がポン友冨永芳徳君からは「そんなに弱ってはいない」とも聞いていた。コロナ禍でお見舞いも叶わず、あまりにも早すぎる御逝去は残念至極である。先生と奥様の御冥福を(合掌)

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[地域包括ケアシステム][地域リハビリテーション]

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