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肺真菌症[私の治療]

No.5111 (2022年04月09日発行) P.40

掛屋 弘 (大阪公立大学大学院医学研究科臨床感染制御学教授)

登録日: 2022-04-08

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  • 肺真菌症には肺アスペルギルス症,肺クリプトコックス症,肺ムーコル症,肺トリコスポロン症等や輸入真菌症(肺コクシジオイデス症,肺ヒストプラズマ症等)が挙げられる。近年,免疫不全患者の増加に伴う日和見感染症として注目されている。本稿では,肺アスペルギルス症と肺クリプトコックス症について言及する。

    ▶診断のポイント

    肺真菌症は主に基礎疾患を有する患者に発症するため,患者背景の確認が重要である。侵襲性肺アスペルギルス症は,血液悪性疾患や長期の好中球減少状態や機能不全,大量のステロイド治療等を受ける高度免疫不全状態患者に発症する。慢性進行性肺アスペルギルス症と単純性肺アスペルギローマは,陳旧性肺結核や慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の肺の基礎疾患を有する患者に発症する。一方,肺クリプトコックス症は,HIV/AIDSやステロイド・生物学的製剤等の免疫抑制薬が投与される細胞性免疫不全患者に発症するが,健常者にも発症することがある。

    胸部CT等の画像所見を手がかりに肺真菌症を疑い,血清診断にてスクリーニングを行う。確定診断は,呼吸器検体より培養検査や病理組織学的検査で真菌を証明する。侵襲性肺アスペルギルス症の胸部CTでは,結節影やhalo sign,air crescent signを呈する。血清診断では,ガラクトマンナン抗原検査やβグルカン検査が有用である。慢性進行性肺アスペルギルス症の胸部CTでは,空洞内部の真菌球,空洞壁の肥厚,空洞周囲の浸潤影が徐々に増悪する。単純性肺アスペルギローマでは,既存肺空洞の中に単一の真菌球を認め,基本的には非活動性である。いずれもアスペルギルス沈降抗体(保険収載外)が陽性になることが多いが,血清ガラクトマンナン抗原やβグルカンは陰性であることも多く,診断に有用ではない。肺クリプトコックス症の胸部CTは結節影や空洞影,浸潤影等多彩な陰影を呈し,グルクロノキシロマンナンを検出する血清抗原検査が有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    高度免疫不全患者に発症する侵襲性肺アスペルギルス症では,確定診断を待たずに抗真菌薬を開始することが重要である。その治療にはボリコナゾールが第一推奨薬として位置づけられるが,分離真菌の菌種同定を行い,薬剤感受性に基づいた治療薬選択が望ましい。慢性進行性肺アスペルギルス症では,抗真菌薬による長期間の治療を行う。呼吸困難や血痰等の症状を有する場合は入院の上,注射薬にて治療導入を行う。症状が軽度で安定している場合は経口薬で開始してもよい。単純性肺アスペルギローマには原則,外科的手術を行うが,低肺機能で手術が困難な場合は,慎重な経過観察もしくは抗真菌薬による治療を検討する。

    肺クリプトコックス症は,脳髄膜炎の合併の有無によって治療方針が異なる。脳髄膜炎を伴う肺クリプトコックスの治療では,導入療法(アムホテリシンBリポソーム製剤とフルシトシンの併用),地固め療法(フルコナゾール),維持療法(フルコナゾール)にわけて行うが,治療期間はHIV感染の有無によって異なる。脳髄膜炎を伴わない肺クリプトコックス症はフルコナゾールにて治療を行うが,基礎疾患を有する場合には6カ月間,基礎疾患を有さない場合は3カ月間を目安に治療を行う。重症例ではアムホテリシンBリポソーム製剤を考慮する。

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