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胃底腺ポリープのがん化の頻度と,特徴的な内視鏡所見は?

No.5108 (2022年03月19日発行) P.50

河合 隆 (東京医科大学消化器内視鏡学主任教授)

登録日: 2022-03-16

最終更新日: 2022-03-15

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上部内視鏡で胃底腺ポリープはH. pylori未感染の胃粘膜によくみられますが,ごく稀にがん化することもあるといいます。①がん化はどのくらいの頻度でしょうか。②特徴的な内視鏡所見はあるのでしょうか。(東京都 S)


【回答】

 【通常の胃底腺ポリープのがん化は稀。内視鏡所見についていくつかの報告例はあるが,PPI投与に伴い増大したポリープとの鑑別が問題となる】

まず,①がん化の頻度ですが,家族性大腸腺腫症に伴う胃底腺ポリープのがん化は多いのですが,散発性胃底腺ポリープ(通常の胃底腺ポリープ)のがん化は稀です。

なお,胃底腺ポリープにがんが合併した報告1)2)はありますが,Kawaseらの報告例はH. pylori陽性症例であり1),Togoらの報告例2)は胃底腺ポリープとの合併が多いと報告されているラズベリー様腺窩上皮型腺癌3)と思われます。

ご質問頂きましたように,胃底腺ポリープは原則H. pylori陰性に認められる疾患であり,胃底腺ポリープに合併する胃底腺型胃癌,胃底腺粘膜型胃癌,ラズベリー様腺窩上皮型腺癌に関しては,今後必ず病理医と一緒に検討していく必要があると思われます。

次に,②特徴的な内視鏡所見ですが,Kawaseらの報告例1)は,表面は平滑であるが中心にくびれを有する非典型的なポリープであり,Togoらの報告例2)は,強い発赤を示す小顆粒が集簇した特徴的なポリープです。そのほか,胃底腺ポリープに合併した胃底腺型胃癌の報告4)では,10mm大の凹凸を伴う表面不整なポリープです。

現在問題となるのは,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)投与に伴い増大したポリープ5)との鑑別になります。良性ポリープの場合には,原則PPI休薬にて縮小します。しかし,PPIを休薬してもポリープが不変または増大したり,さらに形態の表面不整などを認めたりした場合には,診断的治療にて,内視鏡的切除を考慮する必要があると思います。

【文献】

1)Kawase R, et al:Clin J Gastroenterol. 2009;2 (4):279-83.

2)Togo K, et al:World J Gastroenterol. 2016;22 (40):9028-34.

3)Shibagaki K, et al:Endosc Int Open. 2019;7 (6):E784-91.

4)上田裕之, 他:胃と腸. 2014;49(6):921-5.

5)Hongo M, et al:J Gastroenterol. 2010;45(6): 618-24.

【回答者】

河合 隆 東京医科大学消化器内視鏡学主任教授

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