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【識者の眼】「外来診断訴訟の高リスク:ギラン・バレー症候群」徳田安春

No.5104 (2022年02月19日発行) P.58

徳田安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)

登録日: 2022-01-28

最終更新日: 2022-01-28

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ギラン・バレー症候群は、自己免疫的機序により起こる急性の末梢神経障害であり、急速に進行する四肢の脱力を特徴とする疾患である。典型的には両下肢から始まる脱力をきたすので、上行性麻痺とも呼ばれる。この症候群では、初期の比較的軽い症候の時点で受診した際には診断エラーのリスクが高い。この疾患での診断エラーは適切な治療のタイミングの遅れにつながるので要注意だ。

2011〜17年に、米国で行われた診療録レビュー研究によると、ギラン・バレー症候群と最終診断された250人中40人で初期に診断エラーを認めていた1)。平均年齢36歳で男性がやや多く、発症から治療までの遅れは3〜63日。20人(50%)では、初期診断名の記載がなかった。に初期に与えられたエラー診断名を示す。

これらはカメレオン疾患リストとして使える。逆に言えば、これらの疾患をつける際には、ギラン・バレー症候群の可能性も考慮すべきと言える。

この研究では診断エラーの機序も調べている。22人のケースではフレーミング効果がエラー要因となっており、感覚症状が主体のケースや、腱反射が正常であったケースであった。感覚症状がメインであっても、腱反射が保たれていても、ギラン・バレー症候群を安易に否定してはならない。

認知バイアスに関連するものでは、神経専門医の初期診断につられてしまったケース(オーバーコンフィデンス・バイアス)も認めた。また、慢性の末梢神経障害や腰仙髄レベルの神経根障害などの既存の神経障害を持つ場合に、それに帰着させてしまうアンカーリング・バイアスもあった。さらには、頻度の高い疾患である、脳血管障害や不安症を想起してしまったケースも認めた。四肢脱力のケースの診療では注意されたい。

【文献】

1)Gummi R, et al:Neurology. 2018;90(15 Supplement):2.440.

徳田安春(群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)[診断推論]

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