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【識者の眼】「メンタルヘルスの現場から見た労働市場(システムエンジニアの世界①)」岩﨑康孝

岩﨑康孝 (四谷いわさきクリニック院長)

登録日: 2022-01-12

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メンタルクリニックでは、診断や病状を判断するため、患者さんの症状に加え生活全般の話を聞くことが必要です。その中で「仕事」は大きい要素です。患者さんが属する業界を承知していれば、患者さんの仰っていることが「特別」なのか、その業界では「普通」なのかわかります。メンタルクリニックに限らず役に立つかもしれません。そこで、メンタルヘルスの現場という「小さな視点」から見た労働市場についてお話をしていきます。

第1回はシステムエンジニア(SE)です。2回にわたりお話いたします。

IT業界に属する人の中で、臨床現場でしばしば遭遇する職種はSEです。

業界的にはSE、プログラマー、Webデザイナー等の様々な仕事や分類があるのですが、ここではソフトウエアのプログラミングを仕事としている方をSEと呼びます。

この業界の第一の特徴は「転職者が多い」ことです。SEを生業とする人が元々飽きっぽいと言うわけではないところがポイントです。むしろ、業界の事情が強いと思います。それは、現在のIT業界の急成長です。総務省の統計では「情報サービス業」と括られています。平成27(2015)年から平成30(2018)年の間、売り上げが毎年1兆円ずつ増えています1)。合計18兆円。総額はざっと国民医療費の半分弱です。医療費が1兆円増えるのに2〜3年かかりますから、この業界の伸びは2倍の速さです。業務のデジタル化(DX)やコロナ禍により在宅勤務が推奨されIT化が加速しています。さらに、わが国は先進諸国において産業界のIT化は遅れていると言われています。いくらでも技術者が必要になっています。

また、SEは管理職─非管理職、開発系─維持管理系、領域、時代によってコンピュータ言語(バージョン)や専門性が異なるため、領域ごとの需給ギャップが生じています。産婦人科医不足を内科医や精神科医で埋められないという感じかなぁと思って聞いています。

「頻繁な転職」は、メンタルクリニックでは診断上の重要な因子です。たとえば、双極性感情障害、ADHD、パーソナリティ障害等です。しかし、SEについては、皆が転職しているので診断の材料になりません。一方、治療が奏効して休職者が復職する場合も、復職しやすい印象があります。

第二の特徴は、「残業」です。この件については、次回お話しします。

【文献】

1 [https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd251650.html

岩﨑康孝(四谷いわさきクリニック院長)[メンタルヘルス][労働市場]

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