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【識者の眼】「臨床研究を巡る雑感─臨床研究法改正に向けて」藤原康弘

No.5099 (2022年01月15日発行) P.61

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2021-12-22

最終更新日: 2021-12-22

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去る12月13日、厚生科学審議会臨床研究部会から「臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討の中間とりまとめ」が厚労省のホームページ上に公表されたことをご存じだろうか。2018年4月1日に施行となった臨床研究法は、成立後、現場で様々な問題点が指摘され現在に至っている。中間とりまとめは、2021年1月の第19回臨床研究部会から行ってきた議論と2020年度厚労科研特別研究「臨床研究を取り巻く状況を勘案した臨床研究法の法改正も含めた対応策の検討」での調査・研究成果1)がバックボーンとなっている。

当該とりまとめでの臨床研究法見直しの論点は5つ。①臨床研究実施体制の国際整合性、②臨床研究法への該当性の明確化、③手続きの合理化、④透明性の確保(経済的な利益相反)、⑤研究の質の確保、である。2022年当初から後半戦の議論が始まり、改正法案の国会での審議に引き継がれていく。

臨床研究法は、2013年、“疫学研究に関する倫理指針”と“臨床研究に関する倫理指針”を統合して“人を対象とする医学系研究に関する倫理指針”とする改訂の議論が厚生科学審議会の専門委員会で行われていた真っ直中に産声を上げた。ディオバン事案などの臨床研究を巡る各種不正事案がその頃多数明らかとなり、倫理指針による規制では不十分では、との世論に押される形で、同年8月に厚労省“高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会”が設置された。同検討会の10月の中間とりまとめでは、臨床研究に係る法規制の必要性についての検討が必要と指摘した。翌2014年4月から11月に行われた厚労省“臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会”で、「一定の範囲の臨床研究について法規制が必要」(下線、筆者)との結論に至り、その後、2016年5月13日に第190回国会閣法第56号として法案提出、2017年4月7日に参議院可決成立となった。一見、国会での審議に時間を要したように見えるが、法案が継続審査となったためで、実質審議は2016年5月25日の衆議院厚生労働委員会で3時間弱、2017年4月6日の参議院厚生労働委員会で5時間弱であった。

法施行後、2019年7月8日に日本医学会から出た臨床研究法の見直しに関する要望書に代表される不満が噴出している。今後の改正の議論にも皆で積極的に関与していかねばなるまい。次回は臨床研究法を巡る課題について少し掘り下げていく。

【文献】

1)総括研究報告書:国立保健医療科学院のホームページの厚生労働科学研究成果データベースから入手可能.

   [https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/145734

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]

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