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【識者の眼】「第6波に向けた準備は本当にできているのか?」和田耕治

No.5093 (2021年12月04日発行) P.56

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-11-22

最終更新日: 2021-11-22

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厚生労働省が10月1日に示した事務連絡「今夏の感染拡大を踏まえた今後の新型コロナウイルス感染症に対応する保健・医療提供体制の整備について」では、同事務連絡に基づいて「遅くとも本年11月末までに、構築方針に沿った体制を構築し、保健・医療提供体制確保計画として取りまとめ」としており、近く都道府県の対応が示される。

第6波がどうなるかは「わからない」が、それでは解決策にはつながらない。

海外の状況、そして今後の社会の姿からすると、ある程度、備えておくべきシナリオは見える。また、第5波を踏まえると、働く年代が自宅で重症化しても医療にたどり着かずに亡くなるということは最少にすべきだと筆者は考えている。

英国の最近のデータをみていると、40代では4週間で約15万人の感染者がおり、そのうち12万5000人はワクチンを2回接種していた。この中で救急受診から1泊入院になった人は521人であった。2回接種していると重症化のリスクは下がるものの、感染者の増加で一定の入院者はでる。

シンガポールでも感染者が増加し、60歳未満、重症化リスクがない、高齢者と同居がないなどの場合は自宅療養としている。ただ、急に具合が悪くなった場合の対応は強化している。

日本でも感染者の中で、60歳未満のワクチン接種者で軽症、という方がこれまでより増えるであろう。社会や経済をできるだけ止めないという力も働いている。また、軽症になれば、受診の行動も変わるであろう。検査を受けにこれまでのように受診しないかもしれない。

そのため、より多くの感染者の中から医療が必要になった人を拾い上げて対応する体制が必要になる。そこには、地域の開業医や訪問看護などの活躍と連携が重要になる。では、そうした対応がそれぞれの地域でできるようになっているのか。

第5波でも、流行した都道府県ではピーク時に10万人あたり300〜500人ほどの療養者を抱えた。都道府県内でも市町村によって対応の差があった。地域で自治体が調整して総力をあげて乗り越えることが、またこの第6波でも求められる。

医療の逼迫を防ぐために病床を確保することに注力するのは重要であるが、これまで以上に感染者数が増えるとすると保健所の逼迫が早く起きるであろう。保健所が効率よく対応できる具体的な取組を考えたい。

リーダーである知事は、そうした体制ができているのか、保健所の状況を確認し、そして市町村とも連携して、机上訓練を呼びかけてはどうであろうか。その際には「誰が」「どう動く」のかを確認しておきたい。

【参考文献】

▶[https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1034383/Vaccine-surveillance-report-week-46.pdf

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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