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第22回日本神経消化器病学会を振り返って

No.5091 (2021年11月20日発行) P.34

中島 淳 (横浜市立大学医学部大学院 肝胆膵消化器病学教室主任教授)

登録日: 2021-11-22

最終更新日: 2021-11-18

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超音波検査による慢性便秘症アセスメント・コンセンサスミーティング

第22回「日本神経消化器病学会」は,2020年11月19日,20日の2日間にわたり,AP東京丸の内(東京都千代田区)にて開催された(図1,2)。

 

2日目の11月20日には,筆者と東京大学の真田弘美先生の司会進行のもと,「超音波検査による慢性便秘症アセスメント」と題し,慢性便秘の治療・ケアに資する,直腸を中心としたエコーによる便貯留の観察方法についてのコンセンサスミーティングが行われた。

前半では,次の4題の演題が発表された。①超音波検査を用いた直腸便貯留評価の必要性とこれまでの取り組み(東京大学/松本 勝先生),②慢性便秘症患者における消化管エコーの有用性-CT所見との比較-(横浜市立大学/三澤 昇先生),③体外式超音波検査の慢性便秘症診療への臨床応用(川崎医科大学/眞部紀明先生),④腹部超音波検査を用いた機能性便秘の検討(国立病院機構函館病院/津田桃子先生)である。それぞれの演題では質疑応答を通して活発な議論がなされた。

後半では,超音波画像診断における読影技術の標準化への取り組みとして,「超音波検査を用いた直腸便貯留評価のプロトコル」が発表された。発表では,超音波画像診断における対象者,「誰に」「いつ」「どのように」超音波診断を行っていくのか,その典型画像,手順,鑑別が必要な所見,観察が難しいケースなどがまとめられており,プロトコルの内容について活発な議論が行われた。

会の最後に,今後便性状の詳細な見極めや具体的な画像調整方法の標準化などの,次なる課題をクリアしていくことで,さらに患者のQOLの向上に資することが期待される,と結論づけられた。

大腸通過時間検査 コンセンサスミーティング

続いて行われた,「大腸通過時間検査コンセンサスミーティング〜国際標準に準拠した慢性便秘症診療にむけて〜」では,名古屋市立大学の神谷武先生と藤田医科大学の前田耕太郎先生の司会のもと,SITZMARKSを用いた大腸通過時間検査に関して,次の3題の演題が発表された。①慢性便秘症診療における大腸通過時間検査の意義と役割-慢性便秘症診療アルゴリズムの提言-(自治医科大学/味村俊樹先生),②日本における大腸通過時間検査の現状-アンケート調査より-(名古屋市立大学/神谷 武先生),③大腸通過時間検査を用いた慢性便秘症診療の実際(くにもと病院/安部達也先生)である。それぞれ討論も行われた。

ライブセミナー

ライブセミナー「慢性便秘症〜国内外における最新の難治性便秘症診療〜」では,1日目の11月19日,開会式直後に第1会場にて,筆者の司会のもと,大腸肛門病センター高野病院の高野正太先生より「Management of Obstructed Defecation Syndrome in Japan」と題して,また,Augusta University Medical CenterのSatish SC Rao先生より「Refractory Constipation: What’s New When Going Gets Tough」と題して,国内外における難治性便秘症診療の現状と今後の展望について最新のデータを含めてご講演いただいた。

当学会初のオピオイド誘発性便秘症のセッション

また同日には,本学会では初めての,オピオイド誘発性便秘症(opioid-induced constipation:OIC)のセッションも行われた。

海外ではオピオイド誘発性便秘は過敏性腸症候群のRome IV基準においても機能性便秘症とは分別されており,薬剤性便秘症診療の中で最も重要な位置を占めている。しかしながら,わが国では未だ認知が低く,多くの専門家に広く啓蒙をするために本セッションを立ち上げた。

現在の状況として,酸化マグネシウムやプルゼニドといった従来型便秘薬以外にもエロビキシバットやリナクロチドといった新規便秘症治療薬の使いわけに対するコンセンサスが得られていない。また,OICに特化した治療薬である末梢性μ受容体拮抗薬(ナルデメジン)の登場により,臨床現場では,OICに対してどのように便秘症治療薬の薬剤選択をすればよいか?との声が散見されているのが現状である。

本セッションは,筆者が座長を務め,結束貴臣先生(横浜市立大学),下山理史先生(愛知県がんセンター),森川みはる先生(NPO任意団体 プチボヌール)の3名の演者で行われた。本学会初の企画であり,多くの専門家に聴講いただいた。

State of the Art lecture CIPO(慢性偽性腸閉塞症),SUDD(症候性単純性憩室疾患)セッション

State of the Art lecture CIPO,SUDDセッションでは,National University of Singapore and Gleneagles Hospital SingaporeのKok-Ann Gwee先生と筆者の司会のもと,各々CIPO(chronic intestinal pseudo-obstruction:慢性偽性腸閉塞症)とSUDD(symptomatic uncomplicated diverticular disease:症候性単純性憩室疾患)の第一人者である,University of BolognaのVincenzo Stanghellini先生とイタリアのAntonio Tursi先生から疾患の総論や最新の知見について,ご講演いただいた。

環太平洋交流特別講演

環太平洋交流特別講演は,National University of Singapore and Gleneagles Hospital SingaporeのKok-Ann Gwee先生と東北大学の本郷道夫先生,日本医科大学の二神生爾先生の司会のもと,国外の各分野の第一人者の先生より3演題が発表された。

1演題目は,Kok-Ann Gwee先生より「Herbal Medicine in Functional Dyspepsia – Potential and Pitfalls」と題して,機能性ディスペプシアについて漢方薬を中心にご講演いただいた。2演題目は,Chulalongkorn UniversityのSutep Gonlachanvit先生より,「IBS in Thailand」と題して,タイにおけるIBSの現状について,食生活や生活様式の違いを踏まえて,ご講演いただいた。3演題目は,University of NewcastleのNicholas J Talley先生より,「Eosinophilic esophagitis(EoE):What’s new and what to do」と題して,好酸球性食道炎の総論について最新の知見を含めてご講演いただいた。

新型コロナ感染症対策

本学会中は,新型コロナ感染症対策のため,会場ではアルコール消毒やアクリル板を設置し,ソーシャルディスタンスのため各席の間隔をあけて運用した。マスク・咳のエチケット・うがい・手洗いを励行し予防策を講じたことで無事安全に学会を運用することができた。また,海外からの招聘が困難な先生方にはweb講演を行い,滞りなく進行した。

未曾有の事態ではあったが,感染予防策を徹底し,無事に学会を終えることができたのも参加者や市民の皆様のおかげであったと思う。来年度,感染の進展は未だ不明であるが,この未曾有の事態を乗り越えたことは,次の学会開催への一歩となると考えている。

市民公開講座

2020年11月22日,神奈川歯科大学附属横浜クリニック(神奈川県横浜市)において,「第22回日本神経消化器病学会 市民公開講座」を開催する予定であったが,コロナ禍のため,少数参加の会場型とZOOMを用いたweb講演型にわけて開催した(図3)。


会場型では,ソーシャルディスタンスのため30名に制限し,web型も30名の市民の方に参加いただいた。
会場型の講師は,結束貴臣先生(横浜市立大学),web型は吉原 努先生(横浜市立大学)が登壇し,「腸活していますか?~腸の働きから考える便秘とは~」のテーマで60分,ご講演いただいた。

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