株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

子宮頸癌の母児間移行

No.5082 (2021年09月18日発行) P.48

小野陽子 (東邦大学大学院医学研究科医学専攻博士課程心身医学講座)

小野健太郎 (聖路加国際病院女性総合診療部)

登録日: 2021-09-21

最終更新日: 2021-09-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 子宮頸癌の母親から経腟分娩で生まれた子どもが肺癌に罹患したという報告がありますが,今後どのような対応をしていくべきでしょうか。
    聖路加国際病院・小野健太郎先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    小野陽子 東邦大学大学院医学研究科医学専攻博士課程心身医学講座


    【回答】

    【腫瘍の母児間移行の報告はきわめて特殊なので,「私の子どもは大丈夫?」と不安に思っている患者には安心してもらうことが大切】

    母体のがんが出生した児に移行(母児間移行)することは,きわめて稀な現象です。以前より白血病や肺癌で少数の報告がありますが,今回The New England Journal of Medicine 2021年1月7日号に子宮頸癌の母体から経腟分娩で出生した児に,母体のがん細胞が母児間移行し肺癌を発症した2症例の報告が掲載されました1)。様々なニュースでも取り上げられた影響で,妊婦,または褥婦から「自分の子どもは大丈夫なのか」という不安の声を頂きます。本報告の一部に産婦人科医として関わらせて頂いていたため,私の経験から今後の対応について説明させて頂きます。

    まず,今回の論文の概略について説明します。どちらの症例も妊娠中は子宮頸癌の診断がついておらず,妊娠初期に施行された子宮頸部細胞診検査は陰性でした。患者は,妊娠中にポリープを認めたため分娩直後に組織診断を行い粘液性子宮頸癌と診断された例と,分娩3カ月後に多量の性器出血があり診察したところ腟内に充満する腫瘍があり,生検にて扁平上皮癌と神経内分泌癌の混合腫瘍と診断された例です。2例ともおそらく分娩時には子宮頸癌が存在したと考えられています。患児は,23カ月のときに感冒を煩い撮像した胸部単純X線写真で腫瘤影が見えた例と,6歳のときに胸痛を訴え胸部CT画像で腫瘤影を認めた例です。患者と患児の腫瘍の遺伝子情報が一致したことから母児間転移と考えられました。

    残り477文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top