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血清エストラジオール値はHRT中の動脈硬化の進展に影響を与える

No.5079 (2021年08月28日発行) P.47

寺内公一 (東京医科歯科大学茨城県地域産科婦人科教授)

登録日: 2021-08-27

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 【早期閉経後女性では,血清エストラジオール値が高いほど動脈硬化進展の抑制度が大きい】

ホルモン補充療法(HRT)は,閉経移行期から早期閉経後の女性に対しては動脈硬化に対して抑制的に働くが,後期閉経後女性には有効性を示さないというタイミング仮説は,Early versus Late Intervention Trial with Estradiol(ELITE)研究によって初めて実証された1)。すなわち,閉経後6年未満の女性に対する経口エストラジオール(E2)の6年間の投与は,頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(CIMT)の増加をプラセボに比べて有意に抑制したが,閉経後10年以上の女性においてはプラセボとの間に差を示さなかった。ELITE研究は,HRTは心血管疾患予防効果を有するというWomen’s Health Initiative(WHI)以前の観察研究と,HRTはむしろ心血管疾患を増加させるとするWHI研究の結果との矛盾を解明するものであった。

本研究はその続報であり,血清E2濃度とCIMT増加抑制との関係を検討した2)。早期閉経後女性では血清E2濃度が高いほどCIMTの増加が抑制されるが,後期閉経後女性では,むしろ血清E2濃度が高いほどCIMT増加が促進された。閉経移行期~早期閉経後に開始されたHRTのベネフィットがリスクをはるかに上回ることは確実視されているが,本研究はアテローム動脈硬化予防には十分なE2の血中濃度(本研究では38pg/mL以上)を確保することが望ましいことを示している。

【文献】

1)Hodis HN, et al:N Engl J Med. 2016;374(13): 1221-31.

2)Sriprasert I, et al:J Clin Endocrinol Metab. 2019;104(2):293-300.

【解説】

寺内公一 東京医科歯科大学茨城県地域産科婦人科教授

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