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医療・介護関連肺炎(NHCAP)[私の治療]

No.5074 (2021年07月24日発行) P.34

南宮 湖 (米国国立衛生研究所)

登録日: 2021-07-27

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  • 医療・介護関連肺炎(NHCAP)は,主に医療ケアや介護を受ける高齢者に発症する肺炎であり,日本独自の概念として提唱されている。耐性菌リスクや予後の点で,市中肺炎と院内肺炎の中間的な位置づけとなり,繰り返す誤嚥性肺炎など予後不良の終末期の肺炎像を呈することも多い。なお,NHCAPは米国における医療関連肺炎(HCAP)に対応する分類として提唱されたが,現在,HCAPは米国胸部疾患学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)のガイドラインから削除されている。

    ▶診断のポイント

    NHCAPは,医療ケアや介護を受けている人に発症する肺炎であり,①長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している(精神科病棟も含む),②90日以内に病院を退院した,③介護(performance status 3以上)を必要とする高齢者,身体障害者,④通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,抗がん化学療法,免疫抑制薬などによる治療)を受けている,という項目のうち,1つ以上の項目を満たす対象者の肺炎を指す。症状は,発熱,咳嗽,喀痰,息切れなどであるが,高齢者肺炎が主体のNHCAPでは食欲低下,失禁,日常の活動性低下など,典型的な呼吸器症状を呈さない場合があることに注意する。したがって身体所見では,呼吸数の増加や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の低下などの所見に注意する。NHCAP患者における検出菌は,市中肺炎と異なり耐性菌が多い傾向にある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    NHCAPについては,市中肺炎(CAP)では標的にされない耐性菌が約20%程度に分離される。肺炎球菌をはじめとしてCAPで多くみられる菌に加え,口腔内連鎖球菌,腸内細菌や嫌気性菌の頻度が増していることも報告されており,敗血症の有無,患者の重症度や耐性菌リスクに合わせて,抗菌薬治療を変更する必要がある。NHCAPの重症度判定は様々なスケールがあるが,日本呼吸器学会が定めたA-DROPシステムやIDSA/ATSが定めたPneumonia Severity Index(PSI)等を用いる。耐性菌リスクは,A.過去90日以内の経静脈的抗菌薬の使用歴,B.過去90日以内に2日以上の入院歴,C.免疫抑制状態,D.活動性の低下,などで総合的に判断する。特にこれらのうち2項目以上満たす場合には,耐性菌の高リスク群と判断する。実際の臨床現場においては,過去に患者の喀痰の培養検査で認めた細菌の情報が最も重要である。特に重症度が高い症例においては,過去に喀痰の培養検査で認めた細菌をカバーする抗菌薬の選択が望まれる。

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