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【識者の眼】「日本の新型コロナウイルス対策は本当のところどうなのか─米国人にも聞いてみた(3)」佐藤敏信

No.5075 (2021年07月31日発行) P.63

佐藤敏信 (久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)

登録日: 2021-07-14

最終更新日: 2021-07-14

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米国と日本を比較して気づくのは、米国の新型コロナの感染者と死亡者の数の多さだ()。

各国で比較してみたいのだが、差が著しいため、x軸、y軸ともに対数目盛でないと一覧することもできず、単純な比較は難しい。そもそも人口とその構造、人種の差がある。また日本に関して言うと、新型コロナの罹患が主たる死因でなくとも、幅広に把握することとなっている。

こうした感染者や死亡者の数の違いの説明として、当初から、人種以外にもBCG接種の有無が関係しているのではないかとの説があった。ごく最近も結核の既往との関連を示唆する論文が発表された。

米国の場合で言うと、私は、昨年のかなり早い時点から、新型コロナは2019年の秋には既に侵入していたのではないかと考えていた。当時は「今シーズンは米国国内でインフルエンザによる死亡が多い」として片づけられていたように記憶する。最近になって、そのことを検証しようとする動きがある1)2)。また、インフルエンザの診療において、日本では、疑わしい患者にはしばしばキットを使用して診断の一助とするが、米国では基本的に臨床症状のみで診断しており3)、そのことも原因となったのではないかと思うのである。いずれにしても、米国は早い段階で、新型コロナの侵入を見逃していた可能性がある。

加えて、従来からアジア以外の国は呼吸器感染症に対するマスク着用の意義を認めておらず、CDCも2020年の春の段階では「推奨しない」としていた。また、そもそも日本とは流行しているウイルスの株が異なっていた可能性もある。こうした複合的な要因が重なって蔓延した可能性があるが、いずれの可能性についても現時点では解明されていないため、今後の研究を待たねばならない。

それにしても、私は、死亡者数については、米国の医療制度や保険制度の不備のせいで受診抑制や治療中断に繋がった側面もあるのではないかと想像した。そこで、次回は、米国では医療崩壊はなかったのか、その診療の費用はどこからどう支払われたのかについて、ニールさんやその友人の生の声も聞きながら探ってみることにする。

【文献】

1)Basavaraju SV, et al:Clin Infect Dis. 2021;72(12):e1004-e9.

2)NIH:NIH study offers new evidence of early SARS-CoV-2 infections in U.S. June 15, 2021.

 [https://www.nih.gov/news-events/news-releases/nih-study-offers-new-evidence-early-sars-cov-2-infections-us

3)CDC:Rapid Influenza Diagnostic Tests

 [https://www.cdc.gov/flu/professionals/diagnosis/clinician_guidance_ridt.htm

佐藤敏信(久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)[新型コロナウイルス感染症]

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