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【一週一話】異所性脂肪とメタボリックシンドローム

No.4754 (2015年06月06日発行) P.45

小川佳宏 (東京医科歯科大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・代謝内科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

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  • メタボリックシンドロームの概念は,内臓脂肪型肥満を背景として耐糖能異常,脂質異常症,血圧上昇などの病態が並行して進展し,糖尿病,高血圧症,慢性腎臓病,動脈硬化症などの生活習慣病を発症するという流れを指摘したものである。

    内臓脂肪型肥満の脂肪組織では,脂肪の過剰蓄積による脂肪細胞の肥大化とともに血管新生,マクロファージなどの炎症細胞の浸潤や間質の線維化に特徴づけられる「脂肪組織リモデリング」とも言うべきダイナミックな変化が認められる。

    肥満の脂肪組織では,過剰な脂肪蓄積により肥大化して細胞死に陥った脂肪細胞をマクロファージが取り囲んで処理することにより炎症が慢性化する。これにより,脂肪組織に溜め切れずに溢れ出た遊離脂肪酸は,本来脂肪を溜めることがない肝臓や骨格筋などの非脂肪組織に運ばれて「異所性脂肪」として蓄積し,糖代謝障害や脂肪肝などの代謝障害を発症する。

    アルコール多飲歴がないにもかかわらず発症する非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)は異所性脂肪蓄積により発症する代表的な慢性炎症性疾患であり,内臓脂肪型肥満,糖尿病,脂質異常症,インスリン抵抗性と深く関連するため,メタボリックシンドロームの肝臓における病態と考えられている。特に肝実質細胞の壊死や炎症所見を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)は進行性の慢性肝疾患であり,高い頻度で肝硬変から肝臓癌を発症する。

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