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【識者の眼】「試しに無料の遠隔医療通訳サービスの利用を」南谷かおり

No.5066 (2021年05月29日発行) P.62

南谷かおり (りんくう総合医療センター国際診療科部長)

登録日: 2021-04-28

最終更新日: 2021-04-28

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新型コロナウイルス感染症で初めての「緊急事態宣言」発令から1年が経った。今回大阪では2度目の「医療非常事態宣言」となり、第4波が猛威をふるっている。当院は関西国際空港に近く特定感染症指定医療機関でもあるため外国人感染者も数名収容したが、通訳者に個人用防護具(PPE)を着用させずに遠隔通訳や機械翻訳等で対応した。

渡航制限が強化され訪日外国人は激減したが、なかには帰国できずに当院で出産した妊婦や病気が見つかり治療することになった患者もいた。在留外国人患者はコロナ禍でも来院していたので、医療通訳者には感染防御のレクチャーを行い患者の予約日のみ来院するようにして、残りは国際診療科スタッフが直接話すか遠隔通訳を利用した。そのため2020年度は対面よりも遠隔の使用頻度が増加した。

当院は、2018年度は遠隔医療通訳サービスを有料で使用していたが、2019年度に「大阪府外国人患者受入れ拠点医療機関」に指定され無料となったことで、使用時間は前年度より1.2倍に増加した。そして2020年度は大阪府がこの無料サービスを全ての大阪府下の医療機関と調剤薬局に適用させたので、日本語を話せない患者が近医を受診したり、当院の患者を他院に紹介したりすることが可能となった。しかし、このサービスはあまり知られておらず、当院が説明して初めて他院で利用できたケースや、現場が使いたいのに院内の手続きが煩雑で使えない病院もあった。2020年4月からは、日本医師会医師賠償責任保険制度の付帯サービスで、A1会員であれば電話医療通訳が年間20回まで無料で利用できるサービスが始まり、同年6月からは厚生労働省が「希少言語に対応した遠隔通訳サービス」を電話医療通訳会社に委託し、有料で全国の医療機関が利用できるようになった。

医療通訳が有料だと患者も医療機関も利用しにくい。でも使わなければ価値は実感できないので、訪日外国人で予算が組まれ通訳サービスが無料である今のうちに、大いに試してもらいたい。

南谷かおり(りんくう総合医療センター国際診療科部長)[外国人診療]

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