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めまい[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.26

武田英孝 (山王メディカルセンター脳神経内科,国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授)

登録日: 2021-04-28

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  • 原因診断と同時に,めまいと悪心・嘔吐など随伴症状の一刻も早い軽減と改善のために対症療法を始める。多く(70%)は末梢性めまいとされるが,中枢性めまいは高齢者でその頻度が増加し,また突然死の可能性もあるので,注意する。
    主なめまい疾患についてはその特徴を熟知しておく。良性発作性頭位めまい症(BPPV)については,診断手技および浮遊耳石置換法についても習熟しておく。

    ▶病歴聴取のポイント

    1)いま一度,患者の主訴が間違いなく「めまい」か否かを確認する。

    2)「めまい」を3種類に分類する。
    ①回転性(vertigo):「ぐるぐる回る」「景色が一方向へ流れる」など。半規管・前庭~脳幹前庭神経核,あるいはさらに中枢にかけての主に片側性障害。
    ②非回転性〔動揺性(dizziness)〕:「何となくふらふらする」「船に乗った感じ」など。脳幹,小脳の正中部あるいは両側性中枢障害,または両側内耳障害。
    ③失神性(presyncope/faintness):「気が遠くなる感じ」「立ちくらみのような」「血の気が引く感じ」など。脳血流の減少。

    3)めまい単独か,随伴症状があるかを見きわめる。
    ①めまい単独:BPPV,前庭神経炎,椎骨脳底動脈循環不全,小脳・脳幹部梗塞あるいは(小)出血,頸性めまい,神経血管圧迫症候群(前庭発作症)。
    ②胸痛,動悸,呼吸困難,腹痛,腰痛,嘔吐,便色変化など:心血管疾患,出血性疾患。失神性めまいに合併しやすい。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    臥位など患者の楽な体位で診療する(前庭性めまいは患側を下,小脳性めまいは健側を下にすると楽になる)。移乗の際など,患者の四肢の運動状態に注意する(運動麻痺・小脳失調の簡便な評価)。

    【重症度の判定】

    中枢性は末梢性に比べ重症度が高く,また難聴・耳鳴を伴うものは聴覚を含めた機能予後が不良である。中枢性めまいの鑑別は,めまい以外の神経学的所見(複視,構音障害,小脳失調など)のほか,以下に注意する。
    ①血圧高値(来院時血圧が180~200/90~120mmHg以上)
    ②血管障害のリスクファクター(高血圧,糖尿病など)
    ③高齢者(60歳以上。迷路・半規管の虚血によるものが少なくない)
    ④四肢・体幹の平衡機能障害(歩行困難など)が眼振に比べ高度(脳幹・小脳病変の可能性)

    【バイタル・身体所見・意識レベル】

    ①高齢者で上述のごとく来院時血圧が高値,または血管障害のリスクファクターを2つ以上有する際は,脳血管障害による中枢性めまいを疑う。
    ②貧血は血液検査で評価する。出血性疾患に注意。
    ③不整脈,心雑音に注意。
    ④進行性の意識障害は中枢性めまいと考え,直ちに頭部CTまたは頭部MRIを施行し専門医に相談。バイタルサインの急変に注意。
    ⑤発汗の著明な意識障害では出血性ショックや低血糖発作を考慮。

    【神経学的所見】

    以下を確認すれば,中枢性めまいの鑑別には十分である。
    ①患者の訴え:四肢・顔面の動きづらさやしびれ感,ろれつが回らない(構音障害),ものが二重に見える(複視),頭痛。
    ②他覚的所見:Horner症候群,眼球運動障害,眼振,構音障害,上肢Barré徴候,感覚障害,四肢体幹の小脳失調,起立・歩行障害(Romberg試験,歩行偏倚,継ぎ足歩行,足踏み試験など)。

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