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【識者の眼】「COVID-19に振り回される大学生の講義」並木隆雄

No.5063 (2021年05月08日発行) P.97

並木隆雄 (千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)

登録日: 2021-04-23

最終更新日: 2021-04-23

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2021年度の新学期が始まった。3月が例年になく暖かい日和だったため、桜も満開となり、晴れやかなスタートとなった。このような新学期を迎えるのは2年ぶりであり、入学式も講義スタイルも昨年とは様子が異なった。昨年の春は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染様式が把握できなかったために実施された、全国の小中高等学校などの一斉休校が新学期の様相を一変させ、入学式の中止が相次いだ。大学の講義への影響としてはネット講義への変更があった。その当時はまだ、教員も講義をサポートする職員も、ネット授業の方法に全く慣れていなかったため、非常に苦労した記憶にある(COVID-19のおかげで10年以上もネット講義の技術習得が前倒しされたともいえるが)。その後、COVID-19は学童より高齢者で致死率が高いことが明らかとなり、流行してない地区から休校が解除されていった。学習指導要領に著しい遅れを生じないようにすること、低学年がいる共働き家庭など休校を長期化できない事情もあったと考えられる。しかし、上記のような切実な状況のない大学だけはCOVID-19対応が続くこととなった。「義務教育」の学校でさえ対面授業を再開した状況は、大学生の対面授業への渇望を一層引き起こしたことであろう。

幸い今年は昨年の経験もあり、感染対策をして大学でも対面授業が再開された。わが講座も4月の最初の授業を担当し数時間の講義を行った。対面授業で以前と違うことは、3密対策で、教室での座席が1つ置きとなり、もともとの教室には収まらないので、2つの教室を使うようになったことである。ただ、対面授業といっても教師は1つの教室でしか講義できない。つまり、半分の学生は対面授業だが、残り半分の学生はもう1つの教室でネット授業を受けることになった(公平を期すため2週間ごとに対面授業となるグループを変えるとのこと)。

さらに現在、追い打ちをかける事態が生じている。皮肉なことに、西の方から、変異型ウイルスが広がってきた。その中には若者も重症化するものがあるらしい。せっかく対面授業を再開したのに、今度は変異型ウイルスで大学生の授業が再度、停止になる可能性が出てきた。既に関西地区では高校生もクラブ活動の自粛要請が始まった。こうなると、頼みはワクチンしかない。病院実習の学生などの一部の例外を除き、ワクチン接種の順番は大学生が最後になるであろう。授業も含めて、大学生の学生生活が一番翻弄されているようである。

並木隆雄(千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)[新型コロナウイルス感染症]

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