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【識者の眼】「地域の未来と日本海ヘルスケアネットの役割②─新型コロナクラスターへの対応」栗谷義樹

No.5059 (2021年04月10日発行) P.60

栗谷義樹 (山形県酒田市病院機構理事長)

登録日: 2021-03-25

最終更新日: 2021-03-25

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地域医療連携推進法人「日本海ヘルスケアネット(HCN)」は2018年4月に設立され、地域の三師会の参加や地域フォーミュラリなど、構成法人と事業内容にいくつか特徴を持っている。連携推進法人は地域医療構想、地域包括ケアの現場への落とし込みが本来の制度目的であるので、役割分担、連携強化は当然だが、地域全体の連結費用管理、介護・診療報酬の再配分機能など、参加法人の経営支援にまで踏み込んでいることが特色である。現行法では、独法や社福は出資や貸付、債務保証が出来ないので、人材派遣を含む業務調整を緊急性の高い順序で法人設立前から調整に入り実行した。共同事業は多岐に亘るが、そのいくつかを掻い摘んで紹介する。

このところ、新型コロナウイルスの感染再燃が課題となっているが、今回は参加メンバーの中で、精神科病院、グループホーム、有料老人ホームを運営する特定医療法人の精神科病院で発生した新型コロナウイルス感染症クラスターについて、日本海HCNの対応を述べる。

同院は220床、急性期、社会復帰、認知症、身体合併症患者を対象とした4病棟を有している。昨年12月4日、看護助手1名がPCR陽性となったことを受け、入院患者を検査したところ、身体合併症患者病棟で5名が陽性と判明した。職員家族4名を含め、最終的に28名が関連陽性者と判明し、地区保健所、クラスター発生病院内に対策本部を設置するとともに、日本海HCNとして早急に行動を開始した。不足する医療器材を参加法人内で調達して緊急提供し、ゾーニングの支援は日本海総合病院から専門職員を派遣して行った。精神科医師1名を派遣して診療機能維持支援、感染症認定看護師2名を派遣して感染防御支援と確認、放射線技師1名の派遣などで通常診療を支えた。支援実施のための調整に日本海総合病院で事務3名を充てた。PCR検査は日本海総合病院検査部で受託して検査フローを構築し、白黒を早急につける体制を整えた。現場と協力し合いながら、感染区域を一カ所に絞り込んで行く作戦が功を奏し、24日後の同月28日には終息宣言までこぎ着けることが出来た。クラスター発生病院との情報共有と、これを支える支援体制が効果的に機能したことが、早期の抑え込みに成功した一因と考えている。

栗谷義樹(山形県酒田市病院機構理事長)[地域医療連携推進法人]

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