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【識者の眼】「感染症疾患に対するオンライン診療の利点」水野泰孝

No.5060 (2021年04月17日発行) P.60

水野泰孝 (グローバルヘルスケアクリニック院長)

登録日: 2021-03-24

最終更新日: 2021-03-24

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感染症疾患に対するオンライン診療は、1990年代以降主にHIV/AIDS、C型肝炎、結核など比較的緩徐な経過を辿る患者の治療に焦点が合わされていたが、最近では合併症のない緊急性の低い感染症診療や、感染管理体制が十分でない医療施設への情報共有及び指導体制の供与など、感染症診療を専門としない医療者側にも有用なツールとして急速に拡大してきた。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)収束の目途が立たない現況下では全国どの地域であっても疑い患者の診療を行う機会は避けられず、自身だけではなく職員の感染リスク及び施設内での感染拡大を防ぐための一つの手段として、オンライン診療のニーズは急速に高まっている。感染症診療における主な利点を以下に示す。

(1)感染に不安を抱く者が極めて多い状況において、施設内での患者集中および感染拡大を最小限に抑制。

(2)対面による受付及び診療による直接的な身体的接触、呼吸器分泌物への曝露リスクを回避。

(3)個人防護具(PPE)の削減及び環境消毒の軽減や感染性医療廃棄物の削減。

(4)確定診断した患者を隔離または治療を開始するために必要な時間を短縮。

(5)医療施設ではない場所での無症状者や軽症者の管理においても持続的な監視を行うことが可能となり、特定の医療機関への負担を軽減する一方で、重症化の兆候を早期に捉えることも可能となり、必要に応じて医療機関への転院も促す。

(6)感染症専門医が不在である医療施設での専門知識の提供や感染対策指導など、医療者間において可能な範囲でのトレーニングの実施。

現在の感染症疾患に対するオンライン診療は院内感染対策を重点に置いたCOVID-19関連の診療がほとんどであるが、病床の逼迫や療養者に対する医療体制が問題視されたことを踏まえれば、(5)(6)は積極的に導入すべき利点である。

また渡航医学領域においても利点は多い。海外渡航者へのワクチン接種は近隣にトラベルクリニックが存在しない場合でも、渡航先や渡航目的などを聴取して推奨ワクチンを選択することで、近隣医療機関あるいは海外の医療機関に引き継ぐ対応が可能となることもある。これまでも海外在留邦人を対象としたオンラインによる健康相談は有効活用されており、特に開発途上国における熱帯感染症の専門診療は海外でも日本語での診療を受けられる安心感につながり、さらなるグローバル化が進む情勢を踏まえれば、ますますニーズが高まることが期待される。

水野泰孝(グローバルヘルスケアクリニック院長)[オンライン診療]

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