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食物アレルギー(成人)[私の治療]

No.5046 (2021年01月09日発行) P.39

福冨友馬 (国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室長)

登録日: 2021-01-09

最終更新日: 2021-01-06

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  • 食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介した,生体にとって不利益な症状が惹起される現象を食物アレルギーという1)。理論的には様々な免疫機序によりアレルギー反応が起こりうるが,最も頻度が高いのはIgE抗体を介した即時型アレルギー症状である。本稿では,成人のIgE抗体を介した食物アレルギーについて概説する。成人の食物アレルギーは,その原因食物,臨床病型,発症機序に関して小児と大きく異なる。頻度の高い原因食物に関して表 2)にまとめた。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    小児発症食物アレルギーの臨床症状は,通常の即時型アレルギーであることが多いが,成人の食物アレルギーは,口腔アレルギー症候群,食物依存性運動誘発アナフィラキシーと言われる,特殊な非典型的な臨床症状をとることも多い。

    通常の即時型アレルギー症状:原因食物摂取後数時間以内に,全身のかゆみや蕁麻疹,吐気・腹痛・下痢などの消化器症状,咳・喘鳴・呼吸困難などの呼吸器症状,脱力・血圧低下などの循環器症状などが誘発されるものである。

    口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS):原因食物を摂取した後の,口腔や咽頭に限局するアレルギー症状である。口唇腫脹,口腔内や喉のかゆみなどの症状をきたす3)

    食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA):アレルギーを有する食物を摂取するだけでは症状はないが,食物摂取後(通常2時間以内,稀に4時間以内)に運動をした場合にアレルギー症状をきたすものである。運動のみならず食事前の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服やアルコール摂取なども症状誘発のきっかけになる。

    【検査所見】
    〈急性期〉

    保険収載されている範囲内では,食物アレルギーの急性期症状を診断するために有用な検査所見はない。誘発症状と病歴に基づいて診断を行う。

    〈非急性期〉

    食物アレルギーの診断の基本は,詳細な問診による特定の食物摂取後の誘発症状の確認と,その食物に対するIgE抗体の証明である。食物に対するIgE抗体の評価方法としては,皮膚検査(プリックテストなど)と血液検査(血液抗原特異的IgE抗体価検査)がある。

    一般に皮膚検査は血液検査に比べ,診断における感度・特異度が高く有用な検査であるが,その施行には経験を必要とする。血液検査は簡便に行えるという利点があるが,必ずしも感度は高くない。血液検査が陰性でも,食物アレルギー診断は否定できない。経口負荷試験は食物アレルギー診断の最も信頼性の高い検査方法であるが,アナフィラキシー誘発のリスクなどがあるため,十分に経験のある医師以外は安易に行うべきではない。

    食物アレルギー診断における食物に対する特異的IgG抗体価検査(保険収載なし)の診断的有用性は示されていない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    食物アレルギー症状の急性期治療は,一般的なアレルギー症状やアナフィラキシー治療と同じである。

    長期管理の基本は,症状を誘発する原因食物の同定と除去,さらには誤食時の対応や備えに関して指導することである。原因食物を同定するために特異的IgE検査を行う際は,患者が摂取した食物に対するIgE抗体価を網羅的に検査していくよりも,成人で頻度の高い原因食物(表)を想定しながら検査を進めていったほうが効率がよい。果物・野菜アレルギーのスクリーニングとしてシラカンバ,カモガヤ,ブタクサ,ヨモギIgE抗体価測定,小麦アレルギーのスクリーニングとして小麦,グルテン,ω-5グリアジンIgE抗体価測定,甲殻類アレルギーのスクリーニングとしてエビIgE抗体価測定,その他ダニ(パンケーキアナフィラキシーのスクリーニングとして),アニサキス,ラテックスIgE抗体価測定を同時に検査していくことを推奨する4)

    現状では,成人の食物アレルギー症状を完全に治療し,自由に摂取できるようにするような治療方法は基本的にないと考えてよい(ただし,例外もあり)。小児の食物アレルギーで試みられているような経口免疫療法(原因食物を少しずつ摂取していく治療法)は,成人では行われていない。

    残り1,633文字あります

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