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血管型エーラス・ダンロス症候群の遺伝子治療の可能性

No.5043 (2020年12月19日発行) P.46

夏賀 健  (北海道大学病院皮膚科講師)

林 周次郎  (獨協医科大学皮膚科准教授)

登録日: 2020-12-18

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  • エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome:EDS)は稀な先天的結合組織疾患で,皮膚の過伸展が有名です。様々な病型のうち,血管型は成人期で致死的な疾患であり,治療法の開発が待たれています。血管型エーラス・ダンロス症候群(vascular EDS:vEDS)の遺伝子治療開発の最近の進歩についてご教示下さい。
    獨協医科大学・林 周次郎先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    夏賀 健 北海道大学病院皮膚科講師


    【回答】

    【siRNA技術を導入した治療法の研究が進められている】

    vEDSは,Ⅲ型コラーゲン遺伝子(COL3A1)の変異によるⅢ型コラーゲン分子の異常を原因とする疾患です。Ⅲ型コラーゲンは多くの組織に分布し,機能の低下により,動脈,消化管,妊娠中の子宮の破裂などの突然死の原因になる重篤な合併症を起こします。欧米の集計によると,重篤な合併症の発症は小児期では稀で,20歳までに25%,40歳までに80%の症例で生じ,死亡年齢の中央値は48歳です。

    常染色体優性遺伝疾患であるvEDSでは,2本あるアレル(対立遺伝子)のうち1本のアレルに遺伝子変異を認めます。遺伝子変異は,コラーゲンに特有の[Gly-X-Y]の繰り返し配列内のGly(グリシン)が他のアミノ酸に置換するミスセンス変異が多く,そのほかにはスプライス変異,ナンセンス変異なども報告されています。2014年に遺伝子変異の種類が生存年齢に影響することが報告され,ナンセンス変異では他の変異よりも長寿で,健常人と寿命がほとんど変わらないことがわかりました。

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