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【識者の眼】「新型コロナウイルス流行下における前立腺がん検診の現状」伊藤一人

No.5041 (2020年12月05日発行) P.56

伊藤一人 (医療法人社団美心会黒沢病院病院長)

登録日: 2020-11-26

最終更新日: 2020-11-26

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2019年に中国・湖北省武漢市で報告された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、瞬く間に世界各国に拡散しました。世界保健機関(WHO)による発表では、2020年5月24日の累積感染者数は約236万人であったのが、半年後の2020年11月24時点では約5900万人となり、半年間で25倍増加しています。累積死亡者数は139万3305人と、半年前の約4倍に達しています。日本国内の感染者数は、11月上旬から第3波が押し寄せており、いまだに収束する気配はありません。

全世界的に医療機関の受診控えによる診断と治療の遅れは無視できない割合で起きていると推測されますが、日本を含む先進国内でも、影響がどの程度あるのかは、現時点で把握はできていません。住民検診、人間ドックなどの2次予防においても受診者数が減少し、疾患の早期発見に支障が出ている事は確実です。

前立腺がん検診についても、全国的な影響はわかっていませんが、2019年と2020年の4〜9月について群馬県のデータを比較しました。群馬県内の住民検診受診者数(群馬大学泌尿器科が精度管理に関わっている市町村)は、1万4340人から7393人(−48%)、当院の健康管理センターにおけるPSA検診受診者数は、人間ドックでは8385人から7590人(−9%)、高崎市検診では201人から124人(−38%)と、特に住民検診受診者数が昨年同時期を大きく下回っています。また、当院泌尿器科での2019年と2020年同時期のPSA検査異常者に対する前立腺生検数も75人から58人(−23%)に減っていますので、早期発見に大きな影響が出ていることは明らかです。

爆発的な新型コロナウイルス感染者数の増加は、医療崩壊につながりますので、クラスターを避けつつ、一方で経済を可能な限り回す行動変容が必要ですが、がん予防医学に関しては、標準予防策をとりながら、可能な限り住民検診、人間ドックなどにおける全てのがん検診受診を維持すべきです。

伊藤一人(医療法人社団美心会黒沢病院病院長)[がん検診]

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