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【識者の眼】「大阪府のコロナ第3波の現状」倉原 優

No.5041 (2020年12月05日発行) P.56

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

登録日: 2020-11-24

最終更新日: 2020-11-24

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2020年11月23日時点で、大阪府の人工呼吸器装着件数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第1波の水準を超え、全国で一番多いという状況にある。人口の多い東京都より患者数が多い理由はよく分からないが、とにかく入院の絶対数が多いというのが第3波の感想である。それゆえ肺炎を合併する患者の絶対数も多くなり、胸部CTを撮影すれば両肺にすりガラス陰影が広がっているという現象もよく見るようになった。コントロール不良糖尿病、肥満の合併が肺炎重症化のリスクだと痛感している。

大阪府では、府の入院フォローアップセンターが主導して、COVID-19患者を各病院に割り振っている状況である。自宅やホテル療養中に悪化した患者の入院依頼は昼夜を問わず起こっており、現場はかなり疲弊している状況である。第1波の頃は現場の士気も高かったが、第3波ともなるとコロナ疲れが目立つようになってきた。この精神的摩耗が医療従事者の感染を招いている現状もありそうで、周辺の病院やクリニックでの感染を耳にすることが増えた。国民の自粛ムードもマスコミが訴えるほど進まず、繁華街の難波辺りは人出がかなり多い現状である。

政府の施策の緩急とも一致しているが、4月、8月、11月と定期的な波を形成している。12月中にはいったん第3波は落ち着くかもしれないが、2021年2〜3月に大きな第4波を形成するかもしれない。

冬のCOVID-19患者数急増を見据えて、大阪府には「大阪コロナ重症センター」(30床)が今年中に開設される予定だが、これでも府の目標重症病床数にはまだ届いていない。同センターの開設にあたり、大阪府内の病院の看護師100人以上が派遣要請されたが、その派遣元の病院ですら看護師が不足している現状があり、さらなる現場の疲弊が懸念される。

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[新型コロナウイルス感染症]

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