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【識者の眼】「『医師の働き方改革』は地域の医療を守れるのか?」小林利彦

No.5037 (2020年11月07日発行) P.59

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2020-10-28

最終更新日: 2020-10-28

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働き方改革関連法に絡んで2024年4月から医師の時間外労働規制が行われるが、現時点で具体的な対応策を取っている医療機関は限られているように感じる。特に、地域において基幹病院でありながら医師の確保が十分でない医療機関では、24時間体制での救急診療が求められることも多く、A水準とされる「年間960時間以内」の時間外労働では地域の医療提供体制が維持できないことも多い。そこで、一定要件のもと、B水準(年間1860時間以内)での対応が2035年度末まで認められる「地域医療確保暫定特例水準」が定められたが、都道府県による認証プロセスは決して容易なものではない。実際、「医師労働時間短縮計画」の作成に始まり、評価機能による第三者評価を受け、地域医療対策協議会・地域医療構想調整会議・医療審議会での審議を経て36協定の締結につながるという長い道のりとなる。

医師が少なく地域偏在が著しい都道府県では、宿日直許可基準や医師の研鑽に係る労働時間の捉え方を若干柔軟に解釈したとしても、そこで働く肝心の医師が納得できない限り真の意味での働き方改革は難しく、優秀な医師の定着は望めないものと考える。近年、医師事務作業補助へのタスクシフト/シェアや特定行為研修を修了した看護師による診療支援が注目されているが、根本的には、医師の専門医取得から始まる生涯教育を地域でどう支援できるか、医師の子供(中高生)の教育をサポートできる地域環境が整っているかが医師の定着には大きな決定要因となる。

大学医局からの医師派遣が約束されておらず、民間の人材紹介会社からの医師紹介に依存しているような地域の医療機関では、全ての診療を自施設で完結することがそもそも難しいことを自覚しているはずである。そのような医療機関では近隣に役割分担をする施設も存在しないことから、必要とされる外来診療機能を最低限確保して、専門診療にはオンライン等による遠隔支援の活用で、一定規模以上の救急診療には患者搬送体制の確立で対処するしかないのが実状である。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[地域医療]

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