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医療ICTの目利きが語る─電子カルテ選び 5つのポイント

大西大輔 (MICTコンサルティング代表取締役)

登録日: 2020-10-13

最終更新日: 2020-10-15

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クリニック向けの電子カルテが登場してから約20年。現在は40社を超える電子カルテメーカーが存在している。この中から自院に最適な電子カルテを選ぶのは至難の業。医療ITコンサルティングの第一人者である大西大輔氏に、最新の電子カルテ選びのポイントを解説してもらった。

電子カルテとレセコンの関係

まず、クリニックでは電子カルテとレセコンをセットで購入するのが一般的です。そのため、電子カルテとレセコンが「どれだけシームレスにつながるか」という部分が長らく重要な選定ポイントとなってきました。

その流れが大きく変わったのが、日本医師会が日医標準レセプトソフト(通称、ORCA)をリリースした2005年。それまでは、電子カルテとレセコンは同一メーカーであることが主流で、「電子カルテ・レセコン一体型」と呼ばれる仕組みが一般的でした。しかしORCAの出現以降は「ORCA連動型」を採用するメーカーが増え、さらに「ORCA内包型」と呼ばれる、レセコン機能が電子カルテに組み込まれたシームレスな仕組みが出てきています。

電子カルテの最新トレンド

現在の電子カルテのトレンドは、電子カルテと周辺システムを組み合わせる考え方が主流で、クリニックのシステムは「電子カルテのみ」という時代はすでに終わりつつあります。電子カルテへのレセコン、画像ファイリングシステムの導入は一般的になり、さらに予約システム、順番管理システム、Web問診システムなど、組み合わせるシステムの種類が年々増えています。

システムを組み合わせ、トータルでコーディネートする流れは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、さらに加速しているように感じます。その背景として、院内のIT化による感染症対策に注目が集まっていることが挙げられます。電子カルテを導入するタイミングに合わせて、オンライン診療システムや自動精算機など医師・スタッフと患者の接触機会を減らすことで感染防止効果が期待できるシステムを組み合わせる動きが出てきています。この電子カルテと周辺システムを組み合わせて考える動きは、電子カルテ選びを複雑化させ、ますます選定を難しくさせているのではないでしょうか。

院内サーバー、クラウド、ハイブリッド

電子カルテのトレンドを語る上で、2010年の医療分野のクラウド解禁が1つのターニングポイントとなっています。従来の院内サーバー(オンプレミス)型電子カルテから、ここ5年で多くのメーカーがクラウドサーバー型電子カルテをリリースしたことで業界地図は激変しています。また、最近では院内サーバー型とクラウド型のメリットを組み合わせた「ハイブリッド型」の電子カルテも出てきています。

院内サーバー、クラウド、ハイブリッド型電子カルテのそれぞれの主な特徴を整理するとのようになります。

定期的な買い替えからサブスク方式へ

電子カルテ選びでは「価格」も重要です。クラウド型電子カルテの増加とともに、定額制の「サブスクリプション」を採用するメーカーが増えています。従来の5~6年ごとに買い替える方式から継続的に定額で課金する仕組みに変わりつつあります。診療所にとっては、長期的な視点でコストの低下が期待できます。

コロナ禍においてはスタッフ同士の密集を避ける必要があり、できる限り「端末数」を増やし、スタッフ同士の距離をとることが重要になっています。それは、1つの端末を複数のスタッフでシェアするという考え方が「密集」を生み出すためです。そう考えると、「端末当たりのコスト」も、電子カルテのコストを考えるうえで重要な要素となっています。

サポートのあり方も大きく変わろうとしています。電子カルテのサポートは、導入時のサポートと導入後のサポートに分かれます。前者は、電子カルテを現場の運用に合わせてセッティングする行為を指し、「導入・研修」と呼ばれます。後者は、導入後の診療報酬改定、システムバージョンアップ、そしてトラブル時の対応を指し、「保守」と呼ばれます。

これらのサポートは、これまで「訪問」して行うことが当たり前でした。しかしながら、コロナ禍により社会のサービスはオンライン対応が急速に一般化しており、それに伴い、「オンラインサポート」を採用するメーカーが増えています。操作研修をオンラインで行うことに抵抗はあるかもしれませんが、人と人の接触を極力減らすことが必要なWithコロナ時代では「営業もオンライン」「サポートもオンライン」がニューノーマルになるかもしれません。

電子カルテ選び 5つのポイント

さて、あらためて電子カルテはどう選べばよいのでしょうか。整理すると、①レセコンタイプ、②サーバータイプ、③コスト、④サポート、⑤システム間連携─の5つが選択のポイントになります。これらのポイントを理解した上で、自院に適したタイプの電子カルテはどれかという視点で選ぶことが大切になります。私もクリニックから電子カルテ選定の依頼があった際、この5ポイントに関するヒアリングを基に選ぶようにしています。この5つのポイントにも強弱があり、特にコストを重視する方、サポートを重視する方に分かれ、トレードオフの関係にあることに注意が必要です。

機能・操作性の違いはないか?

「機能・操作性の違い」を気にされる方もいらっしゃることでしょう。多くの電子カルテを見てきた経験から申し上げますと、確かに機能・操作性の違いはあります。この機能・操作性の違いは、開発コンセプトや、先発メーカーか後発メーカーによっても異なります。機能・操作性はシステムのデモを受ける際にしっかりと比較してほしいところです。

ただし、機能の違いが年々少なくなってきていることも事実です。また、医療機関側のリテラシーの向上から、機能の差を運用でカバーできるケースも増えています。現時点で機能が足りないメーカーは他社を真似ることで解消していき、「機能差」はどんどんなくなっていくのではないかと思います。

メーカーの「経験値」も要チェック

最後に、電子カルテを選ぶ上で大切なポイントに「経験値」を挙げておきます。経験値とは、電子カルテメーカーの担当者が医療現場を十分に理解しているかという意味です。この経験値が高ければ高いほど、導入時の苦労は減っていきます。経験値が低いメーカーに当たると、それだけ先生自身が苦労しますので、診療科ごとの特徴を十分に理解しているかを質問などから探ることをお勧めします。

電子カルテはクリニックの運用変更を伴います。先生のこれから続く「電子カルテライフ」を一緒に親身に考えてくれる担当者に出会えるかは重要な問題で、いくらシステムの性能が時代とともに向上しても変わらない大切なポイントだと思われます。

[日本医事新報2020年10月10日号 特別付録「これが正解!Withコロナ時代の電子カルテ選び」より]

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