クリニックの人材採用を成功させるためには,自院の強みや特徴を明確に把握し,それを魅力的なメッセージとして発信することが重要です。医療業界の求人市場は年々競争が激しくなっており,単に求人情報を掲載するだけでは,理想的な人材を確保することはできません。特に,医師や看護師,医療事務スタッフなどの採用では,給与や待遇面だけでなく,職場の雰囲気や働きやすさも重要視される傾向にあります。求職者に「このクリニックで働きたい」と思ってもらうには,職場環境の整備やブランディング,適切な情報発信が必要です。
本連載第9回と第10回では,採用側のクリニックが自院の魅力を求職者にうまく伝えるための戦略を詳しく解説します。これまでの回で説明したことと重なるところもありますが,復習だと思って読んでみて下さい。第9回ではまず,職場環境の最適化と,地域社会との連携強化について解説します。
クリニックの強み・特徴を求職者に伝えるための具体的な方法を説明する前に,そもそもその「強み」や「特徴」,つまりクリニックの「魅力」を明確にすることの重要性とその方法についてお話しします。本連載第2回(理念の策定),第7回(採用説明会の内容:クリニックの強みを伝える)でも取り上げていますので,あわせてご覧下さい。
クリニックの人材採用を成功させるためには,まず「どのような医療を提供し,どのような患者を対象とするのか」という方向性を明確にすることが不可欠です。特に,近年の医療業界では,求職者が働くクリニックを選ぶ際に,単に給与や勤務条件だけでなく,「クリニックの理念や診療方針に共感できるかどうか」を重視する傾向が強まっています。そのため,クリニックが明確なコンセプトを持ち,それを積極的に発信することが,優秀な人材の確保につながります。
たとえば,図1のような診療方針が考えられます。