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【識者の眼】「かかりつけ医と地域包括ケア(2)」鈴木邦彦

No.5035 (2020年10月24日発行) P.51

鈴木邦彦 (医療法人博仁会志村大宮病院理事長・院長、茨城県医師会会長)

登録日: 2020-10-05

最終更新日: 2020-10-05

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実際に地域包括ケアシステムを構築するためには、郡市区医師会内に「地域包括ケア委員会」などの事務局を設置する必要があります。その上で、①多職種連携会議の開催、②在宅医療連携拠点の受託、③総合事業や介護予防へ積極的な関与─などを行うことが考えられます。郡市区医師会には地域医療構想調整会議を主導することも求められます。

わが国は明治中期以降、病床を設置した開業が広く行われた経緯により、今日有床診療所、中小病院が多く存在しますが、それらは診療所と同根であるだけでなく、超高齢社会において身近なところでいつでも入院できる貴重な資源となっています。一方、専門医がかかりつけ医として開業するわが国の診療所は、質が高く設備も充実し、検査・診断・治療・時に投薬・健診と高齢者にとって便利なワンストップサービスが可能です。地域包括ケアシステムを構築するためには、郡市区医師会の下で、かかりつけ医機能を持つ診療所、有床診療所、中小病院が、可能なところは在宅療養支援診療所(在支診)や在宅療養支援病院(在支病)になり、できるだけ総合的に在宅支援を行うことが必要です。かかりつけ医には外来医療の延長としての在宅医療が求められていますが、一人だけで対応することは困難になっています。ワークライフバランスを重視する若い医師や女性医師の増加を考えれば、かかりつけ医は可能な範囲で在宅医療を行い、足りない部分は日常生活圏域や在宅医療圏内の在支診や在支病と患者ごとに緩かなグループを作って、短期入院を含めて24時間365日カバーする体制を構築する必要があり、そのためには地域密着型の中小病院や有床診療所の確立が必須です。ちなみに高度急性期の大病院は、その外側で二次医療圏の最後の砦になることが求められます。

地域包括ケアシステムの構築はまちづくりと言われますが、医師会や医療機関は行政の有力なパートナーとなる可能性があります。かかりつけ医は医療と介護の連携から福祉・保健・栄養・リハビリテーションまで幅広く学び、地域や社会に目を向けて、多職種連携のみならず様々なフォーマル、インフォーマルなサービスの連携を推進し、行政と協力して元気な高齢者の社会参加を促すとともに、仕事と子育てや介護の両立支援を通じて次世代の育成まで取り組むことにより、人口減少社会から全世代・全対象型地域包括ケアによる再生を目指す社会づくりを行うことが期待されています。

鈴木邦彦(医療法人博仁会志村大宮病院理事長・院長、茨城県医師会会長)[地域包括ケアシステム②]

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