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【識者の眼】「新たな悉皆的脳卒中データバンクへの期待」峰松一夫

No.5028 (2020年09月05日発行) P.60

峰松一夫 (公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)

登録日: 2020-08-28

最終更新日: 2020-08-28

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本連載の初回(No.5000)に書いた脳卒中・循環器病対策基本法に基づく「循環器病対策推進基本計画」は、本年6〜7月頃に閣議決定のはずだったが、新型コロナウイルス感染症による循環器病対策推進協議会審議の遅れで、「パブコメ募集」の段階である(8月26日〜9月10日まで)。

その基本法の第18条に「国及び地方公共団体は、循環器病に係る予防、診断、治療、リハビリテーション等に関する方法の開発及び医療機関等におけるその成果の活用に資するため、国立研究開発法人国立循環器病研究センター(以下、国循)及び循環器病に係る医学医術に関する学術団体の協力を得て、全国の循環器病に関する症例に係る情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるように努めるものとする」と記載されている。情報収集体制整備は、基本法の基本的施策の中でも中核的なものである。

驚くべきことに、わが国には全国を網羅する悉皆性の高い脳卒中患者データベースは存在せず、秋田県や滋賀県などの県単位の調査結果で全国を類推してきた。したがって、正確な脳卒中患者数、有病率、罹患率、致命率は不明であり、医療やサービス提供のための、地域の医療資源や社会資源の十分な把握もなされてこなかった。

一方、悉皆性等に問題はあるものの、DPC情報を基にしたJ-ASPECT研究、脳卒中医療の質の向上を目的としたClose The Gap-Stroke Program、脳神経外科医療登録事業 Japan Neurosurgical Database(JND)、症例個別診療情報を登録する日本脳卒中データバンクなどが、問題解決に一部役立ってきた。

このうち、日本脳卒中データバンク(http://strokedatabank.ncvc.go.jp/)は、1999年に厚生労働科学研究として開始され(主任研究者:小林祥泰)、日本脳卒中協会データバンク部門を経て、2015年より国循に運営移管された(運営委員長:峰松、豊田一則)。既に約19万件もの症例が蓄積され、個票を用いたデータベースとしては世界有数のものである。

基本法に基づく新たな悉皆的脳卒中データバンク事業が開始され、諸問題の解決に貢献することを期待したい。

峰松一夫(公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)[脳卒中]

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