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切除可能な大腸癌肝転移に対する最適な治療戦略は?

No.5025 (2020年08月15日発行) P.51

元井冬彦  (山形大学大学院医学系研究科医学専攻外科学第一講座教授)

髙橋道郎  (東京都立墨東病院外科医長)

長谷川 潔  (東京大学大学院医学系研究科臓器病態外科学肝胆膵外科・人工臓器移植外科教授)

登録日: 2020-08-13

最終更新日: 2020-08-06

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  • Stage ⅢおよびStage Ⅱハイリスク大腸癌では術後補助化学療法が行われます。一方,切除可能な大腸癌肝転移(Stage Ⅳ)に対しては転移巣切除が推奨されますが,転移巣切除の周術期補助療法に関する治療指針は明確ではありません。切除可能な大腸癌肝転移に対する最適な治療戦略の要点をご教示下さい。東京大学・長谷川 潔先生にお伺いします。

    【質問者】

    元井冬彦 山形大学大学院医学系研究科医学専攻外科学第一講座教授


    【回答】

    【肝切除が中心的な役割を担う。再発病変に対する外科的治療の介入も重要】

    「大腸癌治療ガイドライン」1)にも「他の治療法では得られない良好な成績」と明記されているように,切除可能な肝転移に対しては,肝切除が治療の中心的役割を担うことでコンセンサスは得られています。ただし,いまだに高い術後再発率を考慮すると,切除の前後に化学療法を追加することが予後改善に寄与しうるかが,次の論点となります。

    術前化学療法は,欧州を中心に広く行われてきました。2008年に発表されたEORTC40983(EPOC試験)2)では,切除可能肝転移に対し術前術後にFOLFOX4を投与した群は,切除症例のみの解析では,手術単独群に比べて3年無増悪生存率が良好であることが報告されました。しかし,適格症例をすべて含んだ解析では有意差はなく,追跡解析の全生存率でも有意差を認めなかったことから,解釈には十分な注意が必要です。なお,現時点で,わが国では切除可能肝転移に対する術前化学療法の有効性と安全性は確立されていないとされています(ガイドライン推奨度なし・エビデンスレベルC)。

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