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消化管穿孔[私の治療]

No.5024 (2020年08月08日発行) P.41

貝瀬 満 (日本医科大学消化器内科学教授)

梅田隆満 (メディカルトピア草加病院消化器内科)

登録日: 2020-08-07

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  • 急性腹症の代表的疾患である消化管穿孔(gastrointestinal perforation)は,食道からTreiz靱帯までに穿孔が生ずる上部消化管穿孔と,Treiz靱帯以降の小腸,大腸に穿孔の生ずる下部消化管穿孔に大別される。早期に敗血症,多臓器不全へ移行し致命的となることも少なくないため,いかに迅速・的確に診断し,治療に移行するかが最も重要なポイントとなる。
    また,消化管壁に孔ができたとしても,周囲組織で覆われ腹腔内と交通しなかった場合は穿通(penetration)といい,穿孔に比べ重症化しない場合が多い。本稿では主に消化管穿孔について,上部,下部それぞれについて述べていく。

    Ⅰ.上部消化管穿孔

    ▶診断のポイント

    原因として胃・十二指腸潰瘍が8割程度と最も多く,胃癌穿孔がそれに次ぐとされている。近年では,内視鏡検査時や内視鏡治療後(EMR,ESD,ESTなど)の穿孔例もみられる。腹部食道の特発性破裂(Boerhaave症候群)も,稀ではあるが起こりうる。

    胃・十二指腸潰瘍穿孔では,穿孔初期(2~6時間)は消化液の酸度が高く無菌状態のため,化学的刺激による急性腹膜炎であり激しい自発痛,腹膜刺激徴候を伴うが発熱は伴わない(腹膜刺激期)。その後6時間で麻痺性イレウスを呈し(腹膜反応期),穿孔後12~24時間経過すると細菌増殖が顕著となる(細菌性腹膜炎期)。よって,穿孔後12時間以内に診断し,適切な処置を行うことが望ましい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    内服薬,各種消化器疾患の既往,発症から腹部症状の経緯などを問診し,腹部所見として上腹部中心に腹膜刺激症状(筋性防御,Blumberg徴候)がみられれば上部消化管穿孔を疑い,画像診断にて確定診断を行う。並行して血液生化学検査を行い,臨床所見と合わせ重症度を判定していく。最終的には緊急手術の適応の有無を判断することが重要となるため,確定診断後速やかに消化器外科医へコンサルトを行う。

    画像診断は,腹部単純X線(立位,立位が困難な場合は左側臥位)で横隔膜下のfree airを確認するのが初期検査として重要であるが,2割程度でfree airが確認されないため,強く疑う場合はCT検査を追加する。CTではfree air検出率は97%と非常に高く,腹水や炎症の範囲,穿孔部位の同定など得られる情報が多く,消化管穿孔では欠かすことのできない重要な検査である。その他,状況により上部消化管内視鏡,ガストログラフイン®(アミドトリゾ酸)など水溶性造影剤による消化管造影,腹部超音波検査などが施行される。

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