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【識者の眼】「真の費用対効果を考える(各論その4)〜用語解説」三宅信昌

No.5026 (2020年08月22日発行) P.60

三宅信昌 (三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)

登録日: 2020-08-03

最終更新日: 2020-08-03

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近年は超長寿社会となっています。しかし医療の真の目的は長生きさせるだけでなく、元気に生きる事、すなわち健康寿命の延伸が最も重要だと思います。本人だけでなく、家族等周りの方の幸せにも繋がり、最終的には国の経済損失の軽減にも繋がります。医療行為として「いかに健康寿命を保てたのか」が、真の費用対効果と言えます。以下、医療経済学の用語解説を致します。

1)質調整生存年(quality adjusted life years:QALY)

生存年と生活の質を合わせた指数で健康寿命の指数とも言えます。その指数は効用値です。

2)効用値(Utility)

死亡は0.0QALY、健康に生きた1年は1.0QALYです。その詳細な点数はEQ-5D(EuroQOL‐5demension)などのQOL表を使って計算致します。評価内容は①移動能力、②身の回りの管理、③日常生活(仕事・勉強・家事・趣味など)活動、④痛みや不快感、⑤不安やふさぎ込み─の5項目にチェック項目を設けて点数化します(回答を5分割にした場合はEQ-
5D‐5Lと呼ばれます)。他にも評価方法はありますが、現時点では統一化されていません。

3)増分費用対効果(incremental cost effectiveness ratio:ICER):1QALYを得るために要した医療費

例1)既存薬が一人あたり200万円で100名中85名救命、新薬が一人あたり1000万円で100名中90名救命。

となるとICERは(1000−200)÷(90−85)=160万円/1名救命。新薬は既存薬より5倍高い薬品であるが、160万円で1の命を救った事になり、ICERとしては有効となる。

例2)既存薬Aに新薬Bを追加したことにより2QALY延長し、追加医療費が200万円多く発生した。

その際のICERは200万円÷2QALYs=100万円となる。

ICERは今後の真の費用対効果として有用な指数であり、その理解が大変重要と考えます。

4)支払限度額(willingness to pay:WTP)

日本やアメリカ(基本的に自由診療のため)を除く世界各国では、ICERがいくらまでなら国として保険償還できるかを決めています。日本では2012年に中医協内に費用対効果評価専門部会が設置され、近くWTP方式になる可能性があります。

三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)[診療報酬点数]

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