株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ヘモクロマトーシス[私の治療]

No.5023 (2020年08月01日発行) P.38

新宅治夫 (大阪市立大学医学部発達小児医学分野特任教授)

登録日: 2020-08-03

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • ヘモクロマトーシスは,全身の臓器に鉄が沈着し組織障害を引き起こす疾患で,肝硬変,糖尿病,皮膚色素沈着の三主徴は肝臓,膵臓,皮膚への鉄の蓄積によるものである。このほか心不全,関節の腫脹や疼痛,甲状腺,下垂体,精巣などの内分泌障害など多彩な症状を引き起こす。先天的な鉄代謝に関わる遺伝子(HFEなど)の変異による原発性は,欧米に多くわが国では稀である。男性に多く発症年齢は50歳頃であるが,女性では月経や出産による鉄の喪失により発症頻度は男性の1/10程度で,発症年齢も閉経後で10年ほど遅れる。一方,日本では鉄の過剰投与による続発性がほとんどで,骨髄異形成症候群および再生不良性貧血などの難治性貧血の治療による大量輸血,鉄剤や食事からの過剰摂取などがある。輸血の場合,200mLの血液には約100mgの鉄が含まれ,月に1~2回継続して輸血を行うと数年で鉄過剰症が発症する。このため,月経による血液の喪失量に比べ輸血による鉄負荷が圧倒的に多く,輸血による鉄過剰症の男女比はほぼ同じである。

    ▶診断のポイント1)

    血清鉄の上昇(180μg/dL以上),トランスフェリン飽和度の上昇(60%以上),血清フェリチンの上昇(500ng/mL以上の上昇)があれば,肝臓や骨髄生検により鉄沈着を証明する。肝臓の画像診断で,CT値上昇,MRIのT1,T2強調像で信号強度の低下,超音波検査で肝硬変,肝癌の有無を調べる。最近では肝MRI IDEAL(Iterative Decomposition of water and fat with Echo Asymmetry and Least-squares estimation)IQによる新たな鉄測定法が,非侵襲的検査法として診断に有用である2)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療は,臓器に沈着した鉄を除去する治療と,鉄沈着により生じた臓器障害に対する対症療法にわけられる。鉄を除去する治療としては瀉血が最も効果的な治療法で,Hb値11g/dL,フェリチン値10ng/mLを目標に,1回に200~400mLの瀉血を週に1~2回実施する。

    貧血や低蛋白血症で瀉血のできない症例には,鉄の尿中排泄を促進する鉄キレート剤としてデスフェラール®注射用をデフェロキサミンメシル酸塩として1日1000mgを1~2回にわけて筋肉内に注射する。維持量としては,1日量デフェロキサミンメシル酸塩として500mgに減量する。重篤な症例やショック状態の場合は,1回デフェロキサミンメシル酸塩として1000mgを15mg/kg/時の速度で徐々に点滴静注し,1日量が80mg/kgを超えない範囲とする。

    血小板減少や白血球減少を併発していて,注射による出血や感染の恐れがある患者,あるいは頻回の通院治療が困難な場合など,連日の鉄キレート剤注射を実施することが不適当と判断される症例には,鉄の胆汁中排泄を促進するエクジェイド®懸濁用錠をデフェラシロクスとして20mg/kg1日1回(水100mL以上で用時懸濁し空腹時に内服し,服用後30分間は食事をしないこと),1日量30mg/kgを超えない範囲で行う。最近,食事の影響を受けずより内服しやすいジャドニュ®顆粒(デフェラシロクス)が承認された。患者のコンプライアンスが向上するため,デフェラシロクスとして12mg/kgを1日1回内服し,1日量18mg/kgを超えない範囲で投与することが勧められる。ただし,1カ月当たりの輸血量が少ない(ヒト赤血球濃厚液7mL/kg未満)場合は,初期投与量として半量の1日6mg/kgを投与する。

    残り788文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top