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腸管ベーチェット病/単純性潰瘍[私の治療]

No.5023 (2020年08月01日発行) P.36

松岡克善 (東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科教授)

登録日: 2020-08-04

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  • ベーチェット病は,眼病変・皮膚病変・再発性口腔内アフタ性潰瘍・外陰部潰瘍を特徴とする慢性再発性の炎症性疾患である。ベーチェット病患者の3~16%に消化管病変を合併する。

    ▶診断のポイント

    特異的な症状はないが,腹痛,血便,体重減少などの症状から本症を疑う。消化管病変としては,回盲部の類円型の境界明瞭な深掘れ潰瘍が典型的である。また,小腸や食道にも病変が出現することがある。消化管病変に加えて,ベーチェット病診断基準の完全型または不全型を満たす場合は腸管ベーチェット病,満たさない場合は単純性潰瘍と診断する。血球系に異常を認める場合は,染色体異常であるtrisomy 8を持つ骨髄異形成症候群に伴う腸管ベーチェット病の可能性もある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    腸管ベーチェット病/単純性潰瘍の治療に関するエビデンスは非常に限られているため,基本的にはクローン病や潰瘍性大腸炎に準じた治療を行う。治療は重症度に応じて決定するが,確立した重症度分類はなく,全身症状,腹部所見,潰瘍の大きさ・深さ,消化管合併症(出血,狭窄,穿孔など)の有無,血液検査所見(CRP,アルブミン値,ヘモグロビン値,白血球数)などに基づいて総合的に重症度を判断する。

    軽症例では5-アミノサリチル酸製剤(保険未承認)で寛解導入・維持が可能な場合もある。中等症~重症例では,副腎皮質ステロイドの投与を行う。プレドニゾロン0.5~1.0mg/kg/日を1~2週間投与し,その後は1週間に5mgずつ20mg/日まで漸減する。20mg/日からはゆっくりと減量する。ステロイド依存例に対しては,アザチオプリン(保険未承認)を投与する。アザチオプリンの投与前にはNUDT15遺伝子検査を必ず実施し,R139C多型がリスクホモ(Cys/Cys)の場合は,アザチオプリンの投与は禁忌である。ステロイド抵抗例や依存例に対しては,抗TNFα抗体製剤であるアダリムマブもしくはインフリキシマブを投与する。これらの薬剤が有効であった場合には,寛解を維持するため投与を継続する。インフリキシマブが効果不十分や効果減弱の場合には,1回投与量を10mg/kgに増量することができる。なお,インフリキシマブ,アダリムマブともにバイオシミラーは腸管ベーチェット病に対しては保険適用ではない。また,カルシニューリン阻害薬であるタクロリムスが有効であったという報告もある。重症例や薬物療法抵抗例では経腸栄養療法や中心静脈栄養を併用することもある。腸管ベーチェット病においてもコルヒチンが使われることはあるが,有効性に関するエビデンスは少ない。コルヒチンの投与に際しては下痢の副作用に注意が必要である。

    治療目標は,腹部症状および全身症状の改善とともに,CRPが正常化することが望ましい。さらに,内視鏡的寛解を達成することで長期予後が改善することが期待できる。

    腸管穿孔,腹腔内膿瘍形成,大量出血,狭窄をきたした場合は,手術の絶対適応である。また,薬物療法に抵抗する場合や瘻孔を形成した場合は,手術の相対適応となる。術後,比較的早期から再発することが多いため,術後再発に対する注意が必要である。術後の再発予防にアザチオプリンが用いられることもある。術後再発は吻合部に頻度が高い。

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