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【識者の眼】「『うちじゃない』と言わない堅忍力行」塩尻俊明

No.5022 (2020年07月25日発行) P.54

塩尻俊明 (地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院総合診療内科部長)

登録日: 2020-07-14

最終更新日: 2020-07-14

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ある片田舎の病院総合診療に携わっています。当院の総合診療内科は、外来、病棟、救急に加えて付属診療所・訪問診療でも中心的役割を果たし、地域全体を診る病院総合診療を目指して今日に至っております。大学病院の外来型の総合診療部門と三次救急に、小〜中規模病院の救急・入院診療と併設する診療所・訪問診療が合わさった“複合型病院総合診療”とでもいえるのかもしれません。

入院部門の対象患者は、虚血性脳血管障害、尿路感染症、敗血症・菌血症、肺炎、糖尿病、電解質異常、膿瘍、てんかん、不明熱、皮膚・軟部組織感染症、ウイルス感染症、椎体炎、偽痛風、慢性閉塞性肺疾患、副腎不全、低体温症、リウマチ性多発筋痛症、間質性肺炎など多岐に及んでいます。内科外来・救急外来からの患者受け入れ基本コンセプトは、上記疾患群に加えて、▶いくつかの専門科にまたがる複数の疾患を持つ患者▶どこの専門内科に属するのかが不明の患者▶主病名が内科以外の他科であるが、内科合併症や全身状態が不良のため内科管理が必要な患者▶集中治療が必要な重篤疾患を抱えているが緩和的加療が中心となる超高齢者▶内科専門科に属せない複合的問題を抱えている患者▶社会的に複雑な背景を持った患者、などです。特に救急外来では24時間体制で患者を受け入れています。

そのような現場では、展望のない患者を担当する若手医師は時に意欲を削がれ、モチベーションが維持できないことがあります。そんな時は、今そこに苦しんでいる患者がいる限り、「誰かが引き受けなければならない」、進んで手を差し伸べるのが私たちの役割だということを伝えています。そして、「うちじゃない」という言葉を言わない総合診療の道は、堅忍力行(強い意志を持って困難を耐え忍び、努力して実行すること)の心持ちで、必ずや開かれていく事を示していきたいと考えています。

塩尻俊明(地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院総合診療内科部長)[総合診療]

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